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教育研究所

書評:小島宏の気になる1冊その775

「総合教育技術2017年10月号」 (小学館 本体:1000円)

 教員には「教職の特殊性に鑑み」ということで,残業代は論外とし,調整手当が本給の4%がついているだけである。昭和41年(1966年)当時の文部省によると,超過勤務の実態は1日当たり小学校80分,中学校150分いうデータがある。素人考えでは,4%がこれに当たるということになる。

 最近の文部科学省調査(平成28年度2016年)では,1日当たり小学校224分,中学校249分ということである。教師の業務の範囲と在り方を根本から考えるべきであるが,素人の数遊びという誹りを免れることはできないかもしれないが,小学校で224-80=144(分),中学校で249-150=99(分)の勤務時間を減らすか,調整額の割合を小学校で4×(224÷80)=11.2(%),4×(249÷150)=6.64(%)に引き上げるべきではないか。(この原稿を書いている時,横から覗いていた中学校の数学の先生が,1966年当時から80分:150分=4%:4%と間違っていたのがおかしい。従って2016年も,言うことであった。)

 本誌の今号の総力大特集は「多忙を軽減し,やりがいを生む学校『働き方改革』5つの提言」である。熟読玩味し,ヒントにして,文部科学省・厚生労働省・教育委員会,そして学校現場の英知を結集して,「実現性のある」学校・教員の働き方につなげたい。

 PART1:中教審「学校における働き方改革特別部会」論点解説「小学校で3割,中学校で6割が過労死ライン超えという深刻な事態」,小川正人「業務改善等による負担軽減に加え,もち授業数削減や旧特法の見直しが不可欠」。PART2:識者の提言&実践レポート「働き方」をければ学校が変わる!妹尾昌俊「提言1:業務改革:課題とビジョンの重点から始める本気の業務改革,学校改善」,横浜市立富士見台小学校「実践レポート業務改革:環境が変われば意識も変わる 職員室のレイアウトから始める業務改革」,京都府教育委員会「提言2&実践レポート:地域・家庭との連携:地域人材の活用で教員の負担軽減と児童生徒の多様な学びを支援する」,妹尾昌俊「提言3:チーム学校の推進:人材育成の負のスパイラルを脱出し学校が"チーム"となるために」,東京都杉並区教育委員会「実践レポートチーム学校の推進:外部人材を活用した部活動活性化事業で楽しい部活動と教員の負担軽減を実現」,高橋純「提言4:ICT活用:ICTを活用して膨大な書類作業を軽減 多忙感や徒労感を取り払う」,青木純一「提言5:勤務時間の管理:正確な勤務時間の管理を進めるとともに教員たちの意識改革の徹底を」と,内容が充実している。

 特集2はカリキュラム・マネジメントから各教科別ポイントまで「新学習指導要領が求める「主体的・対話的で深い」授業の具体像・中学校編」,特集3は貧困,虐待,不登校問題「SC・SSW連携術」と,読み応えがあり,活用できる内容である。