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書評:小島宏の気になる1冊その780

小宮信夫著「驚きのアイデアで犯罪をあきらめさせる写真で分かる世界の防犯―遺跡・デザイン・まちづくり」(小学館 本体:1800円)

 危機管理意識なしに学校には勤務できない。第1は子供の生命身体を守ることである。第2は人権侵害・いじめから守ることである。第3は,この第1と第2を基盤に,学校の存在意義である「子供に質の高い教育を保障する」ことである。

 本書は,第1に対応するもので,犯罪から子供や市民・国民を守るための「防犯」を中心に,写真を駆使して「見て分かり」「読んで納得」と言う構成になっていて,今昔の世界の防犯事情を知ることができる。その上で,どのようにしたら,子供・孫を,自分を,様々な犯罪から守るためのヒントを得ることができるであろう。

 1999年に,老妻と中国雲南を旅行した時,麗江のチベット族の家庭を訪問した。城壁都市もどきの頑丈な壁に囲まれた中に,十数軒の建物が丸く連なっており,親族が一緒に生活しているのだそうだ。外部からの侵入者防止と親族助け合っての共同生活をしているのだそうだ。また,2000年に老妻とエジプト旅行した時,ピラミット,王家の谷などでは,あちこちに銃を構えた兵士が配置されており,観光客を護衛していた。珠文に楽しんだものの少し緊張したことを思い出す。

 そんなことを思い出しながら,第1章「機会無ければ犯罪なし―世界標準の視点―(防犯にとって重要なのは,犯人の動機ではなく犯行の機会(チャンス)の例を写真付きで10都市紹介)」,第2章「戦争の歴史は防犯の歴史(戦争と言う名の強盗殺人を防ぐ手立て。それが犯罪機会論のルーツの例を写真付きで27の都市の例を紹介)」,第3章「城壁都市で市民を守る(海外で普通なのに日本ではついぞ生まれなかった城壁都市,しかし,これこそが犯罪機会論のプロトタイプ(基本型)だの例を写真付きで25例紹介)」,第4章「犯罪が起こりにくい建物と街並み―ハード面の対策1―(犯罪機会論という眠れる獅子の目を覚まさせたのは建築家,防犯環境設計として地球規模で展開されているの例を写真付きで24都市紹介)」,第5章「安全な交通で確保する都市計画―ハード面の対策2―(移動中を狙った犯罪を防ぐのは,犯罪機会論に裏打ちされた景色の力の例を写真付きで14都市紹介)」,第6章「地域社会の絆が犯罪を減らす―ソフト面の対策―(アメリカ生まれの割れ窓理論,日本に輸入されると,誤訳や誤解が生まれたが,その本質は,共助の精神とコミュニティ・エンパワーメントだを写真付きで19例紹介)」,第7章「子どもの安全を守る学校と公園(子供にマンツーマン・ディフェンスをさせるのは酷,施設のゾーニングに基づくゾーン・ディフェンスで犯罪を諦め感を持たせる例を写真付きで13紹介)」,第8章「予防に勝る対策なし―未来予測の視点―(絶対絶命の窮地に追い込まれる前になすべきことは?の例を写真付きで8つ紹介)」と,防犯を学ぶとともに,各国の都市を学ぶことができる。