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書評:小島宏の気になる1冊その786

安部利彦編著「決定版!授業のユニバーサルデザインと合理的配慮―子どもたちが安心して学べる授業づくり・学級づくりのワザ」 (金子書房 本体:1900円)

 最近とみに,「ユニバーサルデザイン」,「授業のユニバーサルデザイン」,そして「合理的配慮」に関心が高まっている。しかし,その割には,「よく分からない...?」と言う声が少なくない。

 本書は,星槎大学附属発達支援臨床センター長で,日本授業UD学会理事の著者が編集し,第一線で活躍している29人の実践家の具体的な例を紹介したものである。

 1:「総論(通常学級でユニバーサルデザインを進めるために)」,2:「合理的配慮のために必要な基本知識(通常学級にいる発達障害の子どもたちなど3節)」,3:「クラス全体を対象にしたユニバーサルデザイン(授業のユニバーサルデザインとアクティブ・ラーニング,国語科・算数科・社会科・理科・音楽科・体育科・図画工作科と美術科,教室環境づくりなど10節)」,4:「クラスで「気になる子どもたち」を対象にしたユニバーサルデザイン(授業に集中できない子への支援,こだわりが激しい子への支援など4節)」,5:「授業参加・集団参加のための個別支援(個別支援が必要な時,ビジョントレーニングを用いた「見ること」への支援など4節)」,6:「学校全体から見るユニバーサルデザイン(学校現場での合理的配慮と支援体制づくりなど2節)」,7:「教育のユニバーサルデザインと生徒指導(特別支援教育の視点から見る生徒指導とは,3つの仕掛けで笑顔溢れるクラスを作るなど3節)」,8:「保護者の視点を学ぶ(学校での合理的配慮と家庭での自立の助け,保護者が欲しいもう一つの配慮の2節)」と,内容が充実していて参考になる。子どもの実態,学校の実態,保護者の実情,支援体制の状況などによって,必ずしもこのようにいかない場合もあるであろう。この実践が,子どもに対する限りない愛情から生み出されたところを汲み取って,アレンジして活用してほしい。

 また,「困った子」&「困った親」ではなく,「困っている子」&「困っている親」の発想に立って,その困っていることに配慮した「授業のユニバーサル」,「学級づくりのユニバーサル」,「生徒指導のユニバーサル」,「合理的配慮」の開発・工夫・実践に取り組んでほしい。そして,それをしまい込まず,まずは校内で,近隣の学校で交流し,共有化してほしいと切に望むものである。