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書評:小島宏の気になる1冊その787

大谷翔平著「不可能を可能にする大谷翔平120の思考」 (ぴあ 本体:980円)

 ピッチャー(160㎞超,2016年まで通算39勝13敗),バッター(同ホームラン40本,打率2割7分5厘)と2足の草鞋を履く(いや,この表現は化石,今は「二刀流」というのだ!)あの大谷選手の書いた本だというので迷わず購入し,読んだ。

 本書は,大谷選手が,様々な所でインタビューに答えたことや話したことを,新聞,TV,週刊誌などから引用・編集したもので,3人称で表現してある。内容は,「大谷選手の言葉」を見出しにし,それを「データで裏付けながら簡潔に解説」し,さらに「状況や表情」を表す写真で納得させてくれる構成になっている。

 全体は,第1章「挑戦(誰もやったことがないことをやりたいという気持ちがすごくあります,誰も投げていないボールを投げたいと思って研究していますなど22の思考)」,第2章「苦悩(今のままじゃダメ,それまでは自己中心だったと思います,しかし震災後はもっと周りのことを考えようと誓いましたなど12の思考)」,第3章「向上心(自分で納得していいもの悪いものを区別して取り入れたい,日本一になってみたいです,その景色を見るためにやっているわけですからなど20の思考)」,第4章「素顔(イラッときたら負けだと思っています,拭っていたのは汗です涙ではありませんなど20の思考)」,第5章「克己心(僕はまだまだです,すごいパフォーマンスを長く出せる投手になりたいなど20の思考)」,第6章「哲学(先入観は可能を不可能にする,自分がどこまでできるかということに関しては制限はいりませんなど20の思考)」となっている。

 読み終わって,「日本の若者も捨てたものではない」と感じ,大谷選手を育てたご両親・ご家族,近所・地域の人たち,小学校・中学校・高等学校の先生方,野球を指導した人たちやチームの仲間たちに,素直に「敬意を表したい気持ち」になった。小学校高学年以上なら読みこなせ,野球ファンだけでなく,全ての人に,「何かを与えてくれる」「希望を与えてくれる」,大げさに言えば「生き方を与えてくれる」1冊である。もしかしたら,道徳科の教材にも使えるかもしれない。