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書評:小島宏の気になる1冊その788

L.トープ,S.セージ著 伊藤通子,定村誠,吉田新一郎訳「PBL学びの可能性をひらく授業づくり―日常生活の問題から確かな学力を育成する―」(北大路書房 本体:2200円)

 PBLは,問題解決学習(Project Based learning )の略称で,各教科の中では,それがうまくいっているかどうかは別として,既に日常的に行われている。最近(新学習指導要領)では,道徳科の学習においても問題解決学習の導入が勧められている。と,軽く考えていたが,これは大きな思い違いで,じっくりとこの問題を考えることになった。そして,PBLについて,深く考え,多くのことが分かり,「問題解決学習」の真髄に少し近づくことができた(ような気がする)。 

 訳者は「訳者まえがき」の中で,「PBLの中で私(教師)たちは,学習者の心に灯を点け,学習者(児童生徒,学生)の学びのペースに伴走し,学習者が自力で歩き始めたら姿を消すコーチや監督のような役割だ」(( )内は引用者加筆)と,問題解決学習の真髄を述べている。

 これまで(私たちの算数科のグループでは)の問題解決学習は,基本的には,「問題の理解→自力解決(解決の見通し→その実行&表現)→学び合い(ペア&グループの話合いDialog→全体の議論Discussion)→学習のまとめ(知識・技能,考え方,仕方,法則・性質など)→学習のまとめを類題へ適用・一般化」と,理解して進めてきた。その際,「問題」は指導内容を学習させるのに適したものを教師が与えている。勿論,子供が見つけた問題を扱うこともあるが,トピックス的でそう多くはない。

 ところが本書では,そういう上記のような基礎的な知識・技能(&考え方)を教える(身に付けさせる)ために問題を解決させる学習ではなく,「問題解決学習」を実際の生活や社会現象の中から子供自身が見つけた問題を解決する過程(個人だけでなく,グループで協働して)中で学んでいくものであるというのである。勿論,その過程では,知識・技能にとどまることなく,ものの見方・考え方,学び方,生き方など多角的で多様なものが考えられる。(独り言:総合的な学習の時間のアプローチ,学び方に当たるかもしれない。)

 なるほど,本来の「問題解決学習」とは,こういうものかもしれない。これから考え続けようと思っている。