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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その789
星野富弘著「花の詩画集」(偕成社 本体:1600円)
作者は,昭和45年(1970年)に希望に燃えて,中学校の体育教師になった。ところが,部活動の指導中に頸椎を骨折し,手足が不自由になってしまった。口に筆を加えて,絵や詩を書くようになり,そのユニークな作品が話題になり,詩人,画家,随筆家として認められるようになっていった。自分は平成元年(1989年)に東京都立教育研究所(道徳研究室)に勤務していたが,この頃から中学校の道徳の時間(現在の道徳科)の教材として取り上げられることが結構あり,何回かその授業を参観した記憶がある。
本書は,ここ10年間の詩&画63作品と随筆16編を編集したもので,星野富弘の作品を心ゆくまで堪能できる1冊である。
詩画は季節ごとに編集され,春「一本の茎に一つの花」にはすみれ,一華草,浦島草,スノードロップなど16作品,夏「心のすみにいつまでも」には今日という日,銀龍草,タカネニガナ,ヤマハハコなど17作品,秋「いのちのゆりかご」には野牡丹,柘榴,乳茸など16作品,冬「一円玉を積み重ねて」では木瓜,寒牡丹,節分草,パンジーなど14作品が収められている。詩を表現した独特な文字,身近な草花や料理を描写した温もりのある画は,じっと眺めているだけで,ホッコリとしてくるから不思議である。
そして,「随筆」の部には,家のカラス,足で歩いた頃のこと,竜胆(りんどう),野鳥レストラン,追いかけっこなど16編も心を打つものがある。