ホーム > 教育研究所 > 気になる1冊 > 書評:小島宏の気になる1冊その799
教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その799
中野信子著「ヒトは『いじめ」をやめられない」 (小学館新書 本体:780円)
いじめは,動物が種を残すため,脳に組み込まれた機能である。人間も動物である。ゆえに,「ヒトは『いじめ』をやめられない」と,脳学者である著者は科学的に説明している。でも,著者は,だから「仕方がない」とは言わず,「子供のいじめ」も,「大人のいじめ」も,脳科学の立場から回避策を考えるというのである。さすがである。それでこそ脳科学者,霊長類のトップに立つ人間である。(素人的には,大人のいじめが子供の周りに氾濫していることによる無意識の学習も大きな要因のように思えるのだがいかがだろうか?)で,脳科学者らしく「いじめはなくせない」,だから「回避策」を考えるべきだという。一理ある。でも,「学校(校長,教頭,教職員)」としては,回避策だけでなく,「いじめをしない心」を育てることにも意を用いたい・・・。
第1章:「いじめの快感~機能的・歴史的観点から考える~(第1節いじめのメカニズム」,第2章:「いじめに係る脳内物質(第1節:オキシトシン,第2節:セロ二トン・仲が良い程いじめが起きやすい,第3節:ドーパミン・なぜいじめられる側に原因があると言われるのか)」,第3章:「いじめの傾向を脳科学で分析する(第1節:いじめられやすい人の特徴,第2節:いじめがより深刻化するとき,第3節:男女のいじめの違い,第4節:学校現場のいじめの現状)」,第4章:「いじめの回避策(第1節:大人のいじめの回避策,第2節:子供のいじめの回避策・6月と11月の学級危機を回避する・真面目な組織程いじめが起こりやすい・人間関係を薄めていじめを回避,第3節:教育現場における環境的回避策)」と,いじめ問題に対する指導・対応の新展開のヒントが得られそうな提言である。