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教育研究所
書評:寺崎千秋の気になる1冊807
ジュディス・リッチ・ハウス著 石田理恵訳 『新版 子育ての大誤解―重要なのは親じゃない―(上・下)』 (ハヤカワ文庫 2017.8.1 本体:各840円)
「子育ては親の責任である」という誰もが信じている子育て神話がある。しかし,著者は言う。「親の子育てが子供の将来を決定づけるわけではない。子供は親によって社会化されるわけでもない」「専門家は間違っている」と。
本書は一九九八年に出版され、親の役割について大きな反響を呼び,発達心理学や児童発達の専門家からの厳しい批判とともに,絶賛する者、専門家でも功績を讃える者も多く,反応が別れた図書である。それから約二〇年。幾つかの訂正や加筆、新資料を加えた新版が出された。理由は,相変わらず子育て神話が闊歩し親を悩ませているからである。
では,子供が親によって社会化されるのでなければその要因は何か。それは家庭外での仲間集団の関係,友達関係であり,それを育む文化を重視している。とすれば,学校での子供たちの仲間集団としてのよりよい文化づくり,さらに地域での仲間集団の醸成を家庭,地域と協働して進めることがますます大切となる。学校・教師,そして社会が親の責任に押しつけて終わりにするのではなく。