ホーム > 教育研究所 > 気になる1冊 > 書評:小島宏の気になる1冊その812

教育研究所

書評:小島宏の気になる1冊その812

「東京人2017年12月号№390」 (都市出版  定価:930円)

 12月号の特集は「愛すべき散歩者・永井荷風」である。永井荷風と言えば「ふらんす物語」「すみだ川」「日和下駄」など多くの名作がある。

 そして今年は,「断腸亭日乗(だんちょうていにちじょう1917年9月16日~亡くなる前日1959年4月29日までの42年間の日記)」を書き始めてから100年目に当たる。荷風が歩いた東京の銀座,浅草,荒川放水路,小石川,新宿,市川などの風物,世相や批判などを書きとめた日記である。

 懐かしい荷風や当時の生活や世相・風景写真,直筆の創作メモや原稿など,荷風ファンを始めよき時代の日本文学に関心のある人にとっては何物にも代えがたい1冊である。内容は,以下のように盛りだくさんである。

「ふらんす物語(憧れが「現実」に侵されていく様も,美しい)」,「奇跡の遭遇『ふらんす物語』荷風旧蔵発禁本と自筆原稿」,「日和下駄(無為に歩くのがいい)」,「腕比べ(斎整の美がある荷風の濡絵)」,「荷風の背中を追いかけて,『断腸亭日乗』を歩く・銀座・浅草・荒川放水路・小石川・新宿・市川」,「私家版『濹墨綺譚』から読む・写真家荷風の視線」,「新発見!晩年の創作ノート」,「理想を求めた荷風,現実との狭間で葛藤した安部次郎」,「物事の本質を捉え,自らの信条を貫き通した人生」,「若い世代は荷風をどう読んでいるか」,「歌風をもっと知るためのブックガイド<生き方><町歩き><文筆家>」,「近藤邦男さんに聞く"荷風愛"が積もり積もって半世紀」,「永井荷風展・荷風に息吹を与えられた女性たち」など。他にも「東京芸術劇場「朗読東京」物語を,聴覚で旅する3日間―1日目江戸川乱歩―2日目内田百閒―3日目黒井千次―」など。