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書評:小島宏の気になる1冊その816

鹿毛雅治・藤本和久編著「授業研究を創る―教師が学び合う学校を実現するために」 (教育出版 本体:1800円)


 ほとんどの小・中学校では,校内研究・研修を実施している。しかし,どのように進めたら「子どもに質の高い教育を保障できるか?」に,多くの学校が悩んでいる。そして,これに対する指導・助言・啓発の書があまり見当たらないのが現状である。

 本書は,学者らしい厳密な「授業研究」にこだわる一面はあるものの,次のような構成になっていて,校内研究,いや授業研究を進めている学校にとって,指導案の作成,授業研究の進め方,研究協議会の運営などに有用な多くの情報や示唆を得ることのできる「ガッチリした」「提案性」のある1冊である。

第1部「授業研究を問う」第1章「授業研究を創るために」第2章「授業研究の主体は誰か~当事者が主体となる授業研究の実現のために」第3章「教師は授業研究をどう経験するのか」,第2部「授業研究に臨む」第4章「実践経験者から見た生み出される授業記録と意味解釈」第5章「教師と研究者の対話に基づく校内研修の充実」第6章「子どもの思考と人間形成に視座をおく」,第3部「授業研究に期待するもの」第7章「子どもの生き方の連続的発展」第8「個性的存在として今この時を生きていることを語り合う―「教師の学び」の視点から」第9章「研究授業の質的転換―「学校の学び」の観点から」,第4部「授業研究を展望する」第10章「日本の授業研究の独自性とこれから」。

 ところで,教育公務員特例法<研修>第21条には「教育公務員は,その職責を遂行するために,絶えず研究と修養に努めなければならない。②教育公務員の任命権者は,教育公務員の研修について,それに要する施設,研修を奨励するための法とその他研修に関する計画を樹立し,その実施に努めなければならない。」とある。よって,この条項を根拠に,校内研修として「研究と修養」を意味するべきで,校内研究・研修と言うのは好ましくないと言われることがある。ところが,現場的発想では,授業研究など研究的・実践的に進めるのが「研究」で,「研究」以外に例えば新学習指導要領やその移行措置などを学ぶなどを「研修」と称して,特別な支障は生じていない。