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書評:小島宏の気になる1冊その818

岡田麿里著「学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで」(文藝春秋 本体:1400円)

 

 小学校高学年から中学校まで不登校,引きこもり,高校進学するも同様だった。いじめもあったが,学校・学級に居場所がなかった,認められる・必要とされる場面が少なかったことに原因があったようだ。ところが,著者は,自立心があり自己の考え方・生き方をしっかり持っていたために,脚本家として自己実現できるようになった。

 高校時代にある教師と出会い「交換作文(?)」を続け,どうにか卒業し,ゲームの専門学校に進み,ここでヒョンなことから脚本を書くことになり,デビューを果たしたのだそうだ。本書は,世間に多くある「悲惨ないじめにあったが,こうして克服した」と言う感動ものとは少し異なり,この自叙伝自体が著者をテーマにした「脚本」のようで,大げさに言えば,人生哲学を学ぶことのできる1冊である。もちろん,いじめ問題を考えるヒントにもなる。

 プロローグ「心が叫びたがっていたんだ」,第1章「学校のなかの居場所(小学校に入学するといじめが始まった...)」,第2章「誰に挨拶したらよいかわからない(あの子は私と同じようなのになぜか好かれていた。私は誰に挨拶をしたらいいかわからなくなって)」,第3章「一日,一日が消えていく(学校にいけなくなった私は...)」,第4章「行事のための準備運動(アニメ「あの花」は学校を休んでいたじんたんが...)」,第5章「お母さんだってひどいことをしている」,第6章「緑の檻,秩父(学校は休んでも作文の宿題は提出...)」,第7章「下谷先生とおじいちゃん(高校も行けなくなって...)」,第8章「トンネルを抜けて東京へ(私はやりたいことがある...)」,第9章「シナリオライターになりたい」,第10章「Vシネからアニメへ(シナリオライターになりたいという一念...)」,第11章「シナリオ「外の世界」(監督にまず言われたこと...)」,第12章「かくあれかしと思う母親を主人公にする」,第13章「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない(企画コンペにオリジナル作品を...)」,第14章「心が叫びたがってるんだ」,エピローグ「出してみることで形になる何か」。