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書評:小島宏の気になる1冊その819

平墳雅弘著「保護者はなぜ「いじめ」から遠ざけられるのか」 (太郎次郎社エディタス 本体:1400円)


 著者は,現在の「いじめ」の指導・対応・対策に疑問を呈している。小学校の教員13年間,中学校の教員24年間,合わせて37年間の教職経験を持ち,様々な「いじめ」に関わる体験をしてきた人ならではの鋭く,しかも保護者目線,子供目線の考察と提言・助言に納得できる部分が多い。

 子供の教育に関わる全ての人(校長,副校長・教頭,教職員,保護者・PTA・地域住民,教育委員会関係者,児童福祉司・児童委員,人権擁護員,関係諸機関など)に目を通していただきたい高著である。いろいろな学校の研究会や研修会に参加させて貰う機会が多いので,本書の趣旨を実態や状況に応じて紹介していきたい。

 当の子供に,一番の関係者の保護者に納得の行く「いじめ」の事実,対応の仕方が納得してもらえるような進め方の実施のための手がかりとして活用されたい。

 「はじめに」だけ読めば,著者の意図がわかるが,次のような内容の構成によって,具体的に何をどうすればよいかがはっきり捉えられる。

第Ⅰ部「親からは見えない学校の内側」1「学校のいじめ調査といじめ指導とは(ベールに包まれたいじめ,保護者はかやの外など11節)」2「方針を決めているのは誰(恐怖体験と管理教育,中指揮者によるいじめ認識など5節)」3「子供は学校でどう過ごしているのか(授業開始から放課後まで,子供が友達に抱く不満など6節)」,第Ⅱ部「寝耳に水から始まる親の苦悩」1「学校はいいことしか言わない...学校に二ヶ月通いつめた母親(ここまでしないと動かないのかなど3節)」2「保護者同席の話し合い(いきなりの呼び出し,まさかうちの子がなど5節)」3「何が親子を追いつめたのか...問題児とその親(クラスはわずか数週間で崩壊した,偏見と無理解と学校不信となど5節)」,第Ⅲ部「かやの外からの脱出」1「これからのいじめ認識といじめ対応(これからのいじめ認識といじめ対応,管理型では解決しないなど5節)」2「突破口としての保護者参加(支援がほしい学校と協力したい保護者,学校での我が子の様子をこの目でみたいなど11節)」3「学校側のスべきこと(校長の決断と改革,保護者アレルギーからの脱却など4節)」,4「子供自身が解決すること(自分たちの問題は自分たちで解決する,子供裁判と保護者参加など7節)」,「おわりに(いちばんの問題は,子供の声を聞かないことだ。子供の声を聞かない教育は「管理教育」に向かう...。)」