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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その821
原克彦・前田康裕監修&今度珠美・稲垣俊介著「情報モラルの授業―スマホ世代の子供のための主体的・対話的で深い学びにむかう」(日本標準 本体:1500円)
情報教育の推進が,新学習指導要領に基づく教育の諸課題の一つになっている。当然,その中に情報モラルが含まれている。
情報モラルと言うことで,使う立場の児童・生徒のマナーが中心になりがちであるが,昨今の事故・事件を視野におけば,ゲーム,無料アプリ,SNS,動画サイト,LINEなどの特性を理解しないままに利用して,トラブル(ネット詐欺,座間事件のような事案,不正請求など)に巻き込まれることが少なくない。そこで,情報モラルの中に危機管理を加える必要がある。
本書は,書名のように,小学校低学年・中学年・高学年,中学生,高校生向けの授業モデル(展開例)が10例も示されている。
まず,序論「スマホ世代の情報モラル教育が目指すもの」では,1「これからの情報モラル教育の提案」,2「授業を実施するにあたって」,3「子供が学びに向かう授業」,4「保護者との共有で情報モラル教育を継続し深める」,5「主体的・対話的で深い学びに向かう情報モラル教育(提示した実践事例1~10の授業の概要)」が示されており,教師の基礎的研修にもなる。
そして,内容は,STEP1「学ばせたい内容」の中から実施する授業を選ぶ,STEP2「授業の準備」としてURLから授業で使用するスライド資料をダウンロードし,掲載されているワークシートを印刷する。STEP3授業展開案に基づいて「授業を実施」する。主体的・対話的で深い学び(AL)の視点から「授業の展開(教師の主要な発問,考える時間の確保,ペアやグループ活動,ここがポイントなど)」が簡潔に提示されていて,そのまま授業に活用できるようになっている。勿論,本書をヒントにして,様々に工夫・改善することも可能で,著者はそれを望んでいるに違いない。
なお,さらに深く学びたい人のために,参考文献も紹介されている。