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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その823
阿部利彦編著「授業のユニバーサルデザインと合理的配慮―子供たちが安心して学べる授業づくり・学級づくりのワザ―」 (金子書房 本体:1900円)
ユニバーサルデザインの7原則は,「1:公平な利用,2:利用における柔軟性,3:単純で直感的な利用,4:認知できる情報,5:失敗に対する寛大さ,6:少ない身体的な努力,7:接近や利用のためのサイズと空間」である。(出典:The Center for Universal Design,NC State University)
本書は,特別支援学級に限定することなく,通常学級におけるユニバーサルデザインの視点からの学級経営・生徒指導や授業展開,合理的配慮を具体的に提案したものである。
1「総論(通常学級におけるユニバーサルデザインを進めるために)」,2「合理的な配慮のために必要な基本知識(通常学級における発達障害の子供たち,インクルーシブ教育で学校はどう変わるか,インクルーシブ教育システムと合理的配慮)」,3「クラス全体を対象としたユニバーサルデザイン(授業ユニバーサルデザインとアクティブ・ラーニング,実践例:国語,算数,社会,理科,音楽,体育,図画工作・美術,ユニバーサルデザインを生かした教室環境づくり,どの子も学びやすい授業づくりのために)」,4「クラスの気になる子供たちを対象にしたユニバーサルデザイン(個に特化した支援の検証と学級経営・授業研究の充実,通常学級の中で行う学習支援員と連携したナチュラルサポートについて,授業に集中できない子への支援,こだわりの激しい子への支援)」,5「授業参加・集団参加のための個別支援(個別の支援が必要なとき,認知神経学的側面から見た合理的配慮について,ビジョントレーニングを用いた見ることへの支援,教材教具を生かした支援)」,6「学校全体からみるユニバーサルデザイン(学校現場での合理的配慮と支援体制づくり,外部専門家による訪問型の学校・教員支援(巡回指導)とユニバーサルデザイン)」,7「教育のユニバーサルデザインと生徒指導(特別支援教育の視点からみる生徒指導とは,3つの仕掛けで笑顔溢れるクラスを創る,中学校における教育のユニバーサルデザインと積極的生徒指導)」,8「保護者の視点を学ぶ(学校の合理的配慮と家庭での自立の助け,保護者がほしいもうひとつの配慮)」と,様々な視点から学ぶことができる。(参考:教育情報シリーズ161号ユニバーサルデザイン「困った子」ではなく「困っている子」教育出版教育研究所)
編者が第一部の末文でいみじくも述べているが,「本書の様々な提案を参考に,それぞれの学校のオリジナルなユニバーサルデザインが構築されること」即ち自校流の実践が重要であると思う。また,本書の第6部の学校全体,第7部の生徒指導,第8部の保護者の視点も大事にしたい。