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書評:小島宏の気になる1冊その828

鈴木貴博著「仕事消滅~AIの時代を生き抜くために,いま私たちにできること」(講談社+α新書 本体:840円)


 AI(人工知能=Artificial Intelligence)とロボットの進化が,現在ある人間の仕事の50~90%がなくなると予測されている。これは,人間の仕事,働き方はどうなるのか,人間の生き方はどうあるべきなのかを大きく問われるということである。いささか心配性に過ぎると思われるが,今後,学校教育では,どのような資質・能力を育成すればいいということになるのか,検討する必要性も出てくるであろう。

 現在現職で働いている人,就活をして今後仕事に就く人,今学んでいて近い将来社会人になる人,自分の将来を考えて勉強している児童生徒,それぞれの立場の人は本書をクリティカルリーディングして,AI時代の仕事と生き方,教育の問題,勉強の内容について考える手がかりを探してほしい。

 第1章「仕事はいつ消滅するのか?(なくなる仕事にはどんなものがある?知的な仕事もなくなるのか?など6つの視点からの考えや説明)」,第2章「仕事はなぜ消滅するのか?(人間より賢いAIとはどのような存在なのか?どのようなロボットが開発されているのか?人間がAIやロボットに勝てる点は何?など9つの視点からの考えや説明)」,第3章「仕事消滅から生き延びることはできるのか?(ロボットから人間の仕事を守るものは何?科学者の仕事はAIに奪われるのか?など10の視点からの考えや説明)」,第4章「仕事が消滅していく過程で何が起きるのか?(仕事がなくなるとみんな貧しくなる?未来のラッダイト運動(注:イギリスの産業革命で起こった機械破壊運動)は起きるのか?など5つの視点からの考えや説明)」,第5章「不幸な未来はどう回避できるのか?(みじめな未来になってしまうのか?ロボットに給料を払うことは経済学ではどう考えられているのか?など10の視点からの考えや説明)」,第6章「未来はどうなるのか?(ロボットによるテロをどう防ぐか?ロボットが農業を始めたら日本の農業は復活できるのか?働かなくてよかった人類はどうなる?など6つの視点からの考えや説明)」と,様々な視点から論究している。

 囲碁や将棋の対局(勝負)のようにAI対人間ではなく,今までのように人類の未来永劫の幸福の追求が続くようにするためには,どうあるべきかを考えるきっかけにしたい。