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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その830
ケリー・マクゴニガル著・神崎朗子訳「スタンフォードの自分を変える教室」(大和書房 本体:1600円)
この年齢になって「今さら自分を変えるだって?」と思ったが,まだ90歳にはしばらくあると考え直して読んでみた。著者の講義に学ぼうと多くの学生が集まり,その97%(数学的にはすべてということである)が「自分を変えるきっかけ」を掴んだという。
著者は,スタンフォード大学教授,専門は心理学,心理学博士で,人間関係や健康,幸せ,成功などについて学問的・実践的な研究や講義で好評を博している。それだけに本書は,次のような構成になっていて,まるで,直接著者の講義を受講しているかのような臨場感を持って読み進めることができる。だから「こうしよう」とこだわらず,「そういう考えもあるのか」という程度に受け止めると,何かが得られそうな気がする。
Introduction「自分を変える教室へようこそ―意志力を磨けば人生が変わる(科学と実践から導き出された見解など6節)」,第1章「やる力,やらない力,望む力-潜在能力を引き出す3つの力(脳は1つでも自分は2人いる,自分を何度も目標に引き戻すなど13節)」,第2章「意志力の本能-あなたの体はチーズケーキW-拒むようにできている(こうしてあなたは誘惑に負ける,この2つをしなければ意志力が上がる,ストレスは一瞬でやる気を失うなど17節)」,第3章「疲れていると抵抗できない-自制心が筋肉に似ている理由(自制心は筋肉のように鍛えられる,難しいほうを選ぶことを繰り返すなど16節)」,第4章「罪のライセンス-よいことをすると悪いことをしたくなる(人はまちがった行動を信用する,人には明日はもっとできると考える習性があるなど18節)」,第5章「脳が大きなウソをつく-欲求を幸せと勘ちがいする理由(快感の予感が行動を狂わせる,欲しいものは反射的に不安を生み出すなど17節)」,第6章「どうにでもなれ-気分の落ち込みが挫折につながる(大半のストレス解消法は意味がない,失敗した自分を許すなど15節)」,第7章「将来を売りとばす-手軽な快楽の経済学(すぐ手に入れないと気がすまない,つねに将来の自分を過大評価しているなど18節)」,第8章「感染した!-意志力はうつる(脳は目にした失敗をまねたがる,落ち込んでいるときは誘惑に負けやすいなど19節)」,第9章「この章は読まないで-やらない力の限界(好印象をねらうほど不愉快なことを口走る,禁止を実行に変えればうまくいく(注:本章のタイトルはまさにこれである),意志力に最も大切な3つのことなど9節)」,第10章「おわりに-自分自身をじっと見つめる」。