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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その832
西内啓著「統計学が最強の学問である」(ダイヤモンド社 本体:1600円)
新学習指導要領では,新しい領域「データの活用」が設定されて,統計教育が充実されることになった。社会の中で統計を活用した思考や判断が重要になったからである。
本書は,データ社会を生き抜くためには,統計学という武器と教養が必須であるとして,主要な6分野(社会調査法,免疫・生物統計学,心理統計学,データマイニング(注:膨大なデータの中から有用な情報を引き出す作業),テキストマイニング(注:コード化されていない単語や文章の集まりからキーワードを抽出し,それらの関係性を分析する手法),計量経済学)を,読み物としてわかるように著したものである。
本書の内容は次のように構成されており,社会人として統計を適切・有効に活用するため,教師として児童生徒に統計教育を適切に指導するための基礎共用として役立つ1冊である。
第1章「なぜ統計学が最強の学問なのか?(統計リテラシーのない者がカモられる時代がやってきた,ITと統計学の素晴らしき結婚など4節)」,第2章「サンプリングが情報コストを激減させる(統計家が見たビックデータ協奏曲,部分が全体に勝るときなど3節)」,第3章「誤差と因果関係が統計学のキモである(ナイチンゲール的統計の限界,世間にあふれる因果関係を考えない統計解析,そもそもどんなデータを解析すべきか?など6節)」,第4章「ランダム化という最強の武器(ランダム化比較実験が社会科學を可能にした,ランダム化の3つの限界など4節)」,第5章「ランダム化ができなかったらどうするか?(疫学の進歩が証明したタバコのリスク,統計学が極めた因果の推論など6節)」,第6章「統計形の仁義なき戦い(社会調査法vs疫学・生物統計学,マーケティングの現場で生まれたデータマイニングなど6節)」,終章「巨人の肩に立つ方法(最善の答えを探せ,エビデンスを探してみようの2節)」と,とかく難しくなる事柄を簡潔に分かりやすく解説していて,読み物としても十分楽しめる。
新学習指導要領では算数・数学科で「データの活用」が重視されるようになった。関連する指導にかかわる教師の教養としての一読をお勧めしたい。