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教育研究所

書評:小島宏の気になる1冊その838

NHKテキスト「NHKアナウンサーとともに・ことば力アップ(2016年4月~2017年3月)」 (NHK出版 本体:905円)


 後期高齢者としては,「なんだ最近のNHKのアナウンサーは,きちんとした日本語も話せないのか!」「いい年をして,芸のない売れっ子タレントのまねをして!」などと,視聴しながら画面に向かって独り言を言っている。「黙って視てよ!」と孫にたしなめられながら。

 ことばを使ったコミュニケーションの基本は,「話す」「読む」「聞く」ですが,最近は「呼びかける」ことばも重要になってきている。(アナウンス室長 佐藤淳)

 3つの「きく」,「聞く=hear(意識しなくても聞こえる受動的な聞く)」「聴く=listen(意識的に注意深く深く聴く(傾聴)能動的に聴き取る)」「訊く=ask(質問をして相手の考えや情報を訊き出す)」と,文章で読んでも納得である。(日本語研修センター清水紀雄) 特に,聴くスキルで大切なこと5つ「集中して聴く」「先入観を持たない」「話の腰を折らない」「聴きながら整理する」「次の質問の糸口を相手の話の中から見つける」は,授業の中などで,児童生徒の発言を聴く機会の多い教師にとって素敵な指導である。

 会話力をあげるきく力「訊き出す力をアップ」では,「訊く(質問する)」ときは具体的に,5W「Whenいつ」「Whereどこで」「Who誰が」「What何を」「Whyなぜ」1H「Howどのように」に加えて,相手の思いを大切に,夜遊びで遅く帰ってきた子供に「何やってんだ!!」ではなく「お帰り,リンゴ食べるかい?」と,不良グループとつるんでいた子供に「つるむ気持ちも分かる,俺にもそんな時期があった。友達とのつきあいもむずかしいよ」と言葉をかけ,話す気持ちを沸かせたという事例を紹介している。孫の反抗期に付き合っている我が身には,感謝・合掌の助言である。

 52週52の視点からの「ことば力アップ」,きっとあなたの関心のあることに正対する内容に出会えるに違いない。インターネットで番組を視聴できる。