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書評:小島宏の気になる1冊その845

浅田次郎著「おもかげ」 (朝日新聞出版 本体:1500円)


 著者には色々な作品で出合ったが,平成11年に封切りされた高倉健,大竹しのぶ他の映画「鉄道員(ぽっぽや)」を一番初めに思い出した。

 本書は,毎日新聞連載(平成11年12月13日~平成12年7月31日)をまとめたもので,目次は,第1章,第2章,第3章,第4章,第5章,第6章とだけのなんとも妙なものである。具体的内容は,順に「旧友,妻,義理,幼なじみ」「マダム・ネージュ,静かな入り江」「義理,看護師,顔役」「川の流れる町,赤と白の列車」「ひとり娘,義理,妻」「月の光,ひとりごと,黄色いゆりかご」で編まれている。

 「おもかげ」は,著者の生きてきた昭和時代と平成のはじめの頃の中での人生のあれこれを綴ったものである。

 70歳以上の人なら,幼なじみとして,机を並べたあの教室の中に,あの時代を生きるために働いたバイト仲間として,職場の同僚として,アイドルや憧れの女性の中に,通勤のバスや電車の乗客の中に,自分の体験を重ねて...「そういうこともあった...」「まるであのことを言っているようだ...」「そういう風にに考えれば良かったのだ!」「そうそう,その通り...」と,類似事象を見つけ共感することができよう。