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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その848
NHKスペシャル取材班著「健康格差―あなたの寿命は社会が決める」(講談社現代新書 本体:780円)
本書は,子供も大人も高齢者も当事者である「命と健康」を扱った本である。貧困家庭では肥満が広がっている。
家計に余裕がない家庭では比較的安い炭水化物を摂取するためである,給食のない長期休暇中に食生活が乱れ肥満化する例がある。低所得者の高齢者は,医療機関の受診を控え,健康状態に如実に表れる。また,罹患率が高いのは,胃がんは秋田県(男女),肺がんは和歌山県(男)・石川県(女),乳がんは東京都(突出)などと地域格差がる。このような「健康格差」は,WHO(世界保健機構)によると「4つの要因(所得,地域,雇用形態,家族構成)」にあるということである。(「はしがき」要約抜粋)
子どもを育てる上で,自分が働いていく上で,高齢者としてさらに人生を生きていく上で,「健康」について考え,実行し,より健康に過ごしていくヒントを本書から学びたい。ただし,「個人の健康管理の問題」だけににすり替えるのではなく,行政の施策,医療制度,健康・福祉制度,医療機関,教育などが総合的協同的に対応していくべきことを学び取って,そうあるように進めていただきたい。
「はじめに」,第1章「すべての世代に迫る健康格差(現役世代に迫る危機,高齢者に迫る危機,子供に迫る危機など4節)」,第2章「秋田県男性が短命な意外な理由(平均寿命を生み出す食習慣,変えられない「しょっぱい」食習慣などなど7項目)」,第3章「イギリスの国家的対策と足立区の挑戦(脳卒中が激減!賢い健康格差解消法,子供たちの食習慣改革などなど7項目)」,第4章「健康格差の解消の鍵は?(ハイリスク・アプローチの限界,ソーシャル・キャピタルで世界が注目する愛知県武豊町など7項目)」,第5章「白熱討論!健康格差は自己責任か(健康=自己責任論の背景,自己責任の限界など5話題)」,第6章「拡大する日本人の命の格差」,「おわりに」,「参考文献」,そして成人用の「健康格差かんたんチェックシート」も付いている。