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教育研究所

書評:小島宏の気になる1冊その877

岐阜市立長良小学校企画・編集協力,山住勝広編著・冨澤美千子著「子供の側に立つ学校―生活教育に根差した主体的・対話的で深い学びの実現」(北大路書房 本体:2500円)


 長良小学校は,生活教育の実践家として知られる野村芳兵衛が戦後初期の昭和21年(1946年)~昭和28年(1953年)に校長として務め,教師たちと「長良プラン(子供の側に立つ教育=子供の可能性を信じ,常に子供を正面に見据え,子供の主体性を育てる教育)」を創造し,それを今に継承している学校である。

 現在,新学習指導要領による「児童生徒に育てたい資質・能力(知識・技能の習得,思考力・判断力・表現力等の育成,学びに向かう力・人間性等の養成)」や「主体的・対話的で深い学び」の実現,授業改善や学習評価の改善などが求められている。本書の理論と教育課程と授業実践は,それらを先行実施し,さらに未来志向で改善し続けるもので,多くを学び取ることができる。内容は以下のような構成になっている。

 第1章「子供の側に立つ教育の創造と継承―野村芳兵衛から長良小学校へ(野村芳兵衛の生活教育思想と子供の側に立つ教育など3節)」,第2章「たくましさを培う教育の創造(研究の視点と平成27年度の取組など3節)」,第3章「たくましさを培う授業と学級経営(たくましさ漲る授業―学習集団づくり,一人一人を大切にした学級経営など6節)」,第4章「自主性・連帯性・創造性・健康を育むひらがな活動(長良小学校の特別活動など6節)」,第5章「仲間づくりの生活としての授業-仲間と共に学び合うシステムをつくり出す(守り合っておちつき・助け合ってたのしみ・教え合ってはげむを基盤とした協同学習の活動システムなど3節)」,第6章「息吹活動と授業における学級づくりー言葉かけによる自立する力の育成(自立する力の育成―芳兵衛イズムの思想など4節)」,第7章「みずのわ活動における学校づくりー異学年混合の児童会活動による政治する力の育成(政治する力を育むみずのわの思想と現在の在り方など5節)」,第8章「座談会1野村芳兵衛先生の教育を語る会」,第9章「座談会2子供の可能性を信じ,独自の教育課程を創造する長良小学校」,第10章「教師インタビュー同行する教師たち―日々の苦闘と飛躍」
と,実に重厚である。

 コピペやその場限りの対処などと決別し,子供に質の高い教育を保障する教育・授業づくりに役立てたい。