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書評:小島宏の気になる1冊その878

佐藤優著「悪の正体―修羅場からのサバイバル護身論」 (朝日新書 本体:780円)


 読書好きの友人N氏の勧めであったが,書名を見てちょっと躊躇した。渋々読んでみると,この本は,悪の正体を知り,それに翻弄されない(悪から身を守る)生き方をするにはどうしたらよいか,という趣旨であることが分かって最後まで読み通した。

 平成30年度から道徳科が実施されるが,指導する先生方に一読いただき,「こういう見方・考え方」もあるのかという意味で,道徳科の授業づくりの「何らかのヒント」にしてほしいと思っている。もちろん,鵜呑みにすると悪の正体が見抜けないかもしれないので,クリティカル・リーディングすることが条件である。

 目次をざっと眺めれば,内容のおよその察しが付くので以下紹介する。
第1章「悪は人間によって行われる(人をおとしめ苦しめたい,自然の悪か道徳的悪かなど3節)」法則1「悪に無自覚であってはならない」,第2章「カネと欲望から生まれる悪のシステム(人間の本性がむき出しになるとき,金銭感覚がおかしくなるときなど3節)」法則2「欲望は自力でコントロールせよ」,第3章「誰の中にも悪はある(内在的論理をつかむ,人間に把握が内在しているなど6節)」法則3「不当に人を利用してはならない」,第4章「不条理さに何を見るか(世間が何と言おうと関係ないなど2節)」法則4「正しいことをしても酷い目に遭うことがある」,第5章「言葉だけで心理を操る(人間関係を破綻させる,関係を本質的に変化させるの2節)」法則5「反応しすぎてはならない」,第6章「直観と洞察力を働かせる(テロの脅威に対峙する,不合理ゆえにわれ信ずの2節)」法則6「目に見えることだけが真実ではない」,第7章「角度を変えて世界を見る(世界を理解する考え方など3節)」法則7「専門家と称する人物の行動を見続けよ」,それに付録「役立つ聖書の読み方」「要約がうまくなる「抜き書き」の効用」「断片読みを手掛かりに功利的に生きる」で構成されている。