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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その880
今井むつみ著「学びとは何か―<探究人>になるために」(岩波新書 本体:800円)
著者は,カバーで,「学びとはあくなき探究のプロセスで,杞憂の知識から全く新しいと指揮を生み出すことで,その発見と創造こそ本質だ。古い知識観―知識のドネルケバブ・モデル(注:Doner kebab model 一般的知識観)―から脱却することだ(要約抜粋)」と述べている。
そういう目で見ると本書は,「脳から見た学習―新しい学習科学の誕生」(OECD教育研究革新センター)及び岡本浩一著「上達の法則―効率のよい努力を科学する」(PHP新書)と多くの点で共通しているものがあるように思われる。そして,そこにとどまらず,「知識とは何か?」「学びとは何か?」にまで突き詰めて「探究」し,まさにドネルケバブ・モデルを超えて,「自ら学ぶ力」を育てる学習理論にまで高めているといえよう。
私にとってはやや堅苦しい表現ではあるが,内容(特に言語力の育成,外国語活動・外国語教育の充実などに関して)が参考になるだけでなく,校内研究によって,これまでの実践をどのように止揚(aufheben)していくかという場合のヒントにもなる。
「はじめに」,将棋7冠羽生善治「誰にでもできる探究」,第1章「記憶と知識(知識とは何だろうか?など2節)」,第2章「知識のシステムを創る―子供の言語の学習から学ぶ(できることから始めるなど4節)」,第3章「乗り越えなければならない壁-誤ったスキーマの克服(思い込みの落とし穴,母親のスキーマと外国語学習など5節)」,第4章「学びを極める―熟達するとはどういうことか(スキルの自動化と作動記憶など3節)」,第5章「熟達による脳の変化(脳はどのように変化する,人から学ぶときの脳の変化など4節)」,第6章「生きた知識を生む知識観(生きた知識を獲得するには,暗記は本当にダメなのかなど4節)」,第7章「超一流の達人になる(いかに練習するか,努力か才能かなど4節)」,終章「探究人を育てる(探究人を育てるシンプルな鉄則など3節)」,「おわりに」,「参考文献」で構成されている。