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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その885
レべッカ・ボンド作,もりうちすみこ訳「森のおくから むかし,カナダであった ほんとうのはなし」 (ゴブリン書房 本体:1400円)
この絵本は,おじいさんが自分の子供に語った話を,その子供であるお母さんが子供の私(作者)に聞かせたことを物語にした,「カナダのオンタリオ州ゴーガンダで実際に起きたこと」である。
第1頁を開けると,針葉樹林に囲まれたゴーガンダ湖のほとりに建てられた3階建ての木造の館(注:作者の母親が経営していたホテル)と数件の建物がいくつかいくつかあるのどかな風景が,地味だが素敵に描かれている。そして,1914年頃のアントニオ(注:作者の祖父)が登場し,物語(注:5歳の時体験したこと)が始まる。
第1話(導入)は,人里離れたホテルの生活で友達のいないアントニオのお手伝いと泊り客との交流が描かれている。この頃の子供たちの家族としてのお手伝いは素晴らしいと感心した。
第2話その1は,アントニオが森を散策して自然と触れている場面です。その2は,山火事が起こり,ゴーガンダ湖にみんなで逃げ込み,避難している様子を描いています。その3は,人間だけでなく,森のあらゆる生き物たちが人間たちの避難して湖の中へ避難してきました。その4は,普段は互いに警戒しあっている人間をはじめオオカミやウサギなどがとなりどうしで平気でいるのでした。その5は,山火事が消え,人間はホテルや自宅に帰り,動物のそれぞれ森の奥に消えていきました。
第3話その1は,アントニオたち(注:ホテルの客や山で働いている人たちも)は幸いにして燃えなかったホテルに帰り,ベットに潜り込みぐっすり眠りましたとさ。その2は,アントニオが大人になっても,あの火事の時の「人間と動物を隔てていたものが,あの時だけなくなった」ことを今も思い出すそうです。人間同士もこうありたいものです。
小学校低学年の子供たちに読ませたい本です。道徳科の教材にも使えるかもしれません。5分で読み終わりますから,まず先生方に一読をお勧めします。