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教育研究所
書評:寺崎千秋の気になる1冊 887
鷲田清一・山極寿一著 『都市と野性の思考』(インターナショナル新書 本体:790 円)
著者の鷲田氏は哲学者。京都生まれ。大阪大学総長などを経て現在,京都市立芸術大学学長。我が国を代表する哲学者の一人であり,新聞で人生相談などにも応じている市井人でもある。山極氏は霊長類学・人類学者。東京都生まれ。現在,京都大学総長。氏のゴリラに関する研究はフィールド調査研究そのもので,折々にテレビでも紹介されてきた。
お二人はともに京都大学卒業であるが,出身,大学時代の京都での生活ぶりやその後の研究の方向はまったく違っている。その二人がどのように絡み合うのか興味深い。鷲田氏は山極氏の仕事ぶりを「ごつい思想密な調査,深い知恵」と評し,山極氏は鷲田氏を「都市の思考を代表する哲学者」と評しながら,互いの見方・考え方から自らの世界を広げ深めているように見える。霊長類学と哲学の見方・考え方を学び合う機会をつくり交流し,本書でわかるように自由な対話をする。その内容の広さ・深さに引き込まれる。
都市と野性(ジャングル)の見方・考え方とその交流がこれまでの読者のものの見方・考え方を広げ深めていくことは間違いない。