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書評:小島宏の気になる1冊その890

遠藤 薫 著 「ロボットが家にやってきたら...人間とAIの未来」(岩波ジュニア新書<知の航海シリーズ> 本体:800円)


 現在のロボットは人間のコントロールの下にあるが,このまま発展していったら「人間との関係」はどうなるのだろうか?そんな素朴な危惧を抱きつつ,まず自分が本書を読んで,そのあと孫に「おい,ちゃんと勉強しないとロボットの手下になってしまうぞ!」と読ませようと購入した。ロボットにつながることとしての出来事に産業革命があり,打ち壊し騒動まで起きたが,人間は賢く克服し新しい働き方を作り出してきた。ロボットが進化したら,人間の職業は奪われ生き方も制限されるというのは,あまりにも短絡的な考え方であると著者は主張している。今,孫が,ゲームに飽きるとだらだら読んでいる。

 目次に沿って,本書の魅力のいくつかを紹介してみよう。
1「はじめに―ロボットが家にいたら(ロボットがほしい,ロボットとAIは同じか?など6節)そういえば,ルンバやドローンなどはロボットで,多くの家庭にある。2「人間はなぜロボットをつくるのか?(なぜいまロボット?など2節)」ロボットを求める背景には,老後・病気(介護),収入,災害(リスク対応)など日本人が抱える不安があるらしい。3「ロボットの進化とわたしたちの社会(ロボットは人間を超えるか?など3節)」ロボットが進化すると,自律的に判断して行動する,自律的に思考し新しいアイディアを生み出す,ロボットが感情を持つ,ロボットがロボット同士で子供をつくるなどが予想されるが実際のところどうなのだろうか。4「西欧文化の中のロボット(ロボット・AIの歴史は「機械時計」とともに始まったなど4節)」ロボット作りは機械時計から始まり,近代医学は人間を「機械」と考えるところから始まったらしい。5「日本文化の中のロボット(南蛮船が日本に時計をもってきたなど3節)」日本でもロボットの始まりは時計技術だったそうだ。明治時代に豊田佐吉は自動織機を創ったがこれもロボットだ。ところで,第一次産業革命の際,機械に職を奪われると労働者による打ち壊し事件があったが,その後,機械化と人間の働き方の創造的に調整した事実を引いて,著者はロボット化の将来は決して悲観するものではないと言っている。
6「氾濫するロボット,涙を流すロボット(人造人間の倫理,ロボット3原則とドラえもんなど6節)」アシモフはロボット3原則(1人間に危害を加えてはならない,2人間の命令に服従しなけらばならない,3前の1と2に反しない限り自己を守らなければならない)があり,日本のドラえもん,鉄腕アトム,鉄人28号などは人間に反抗しないロボットである。7「共進化するロボット(ロボットと人間の共存する社会など3節)」ロボットに仕事を奪われたらどうする,反乱を起こしたらどうする,ロボットを殺したら罪になるのか,ロボットと共存するために考えておくことである。8「おわりに―サイボーグ=人間がネットワーク化される世界の危険と希望(サイボーグ化する人間たち,IoTとIoEという<世界脳>その期待と恐怖など4節)」ヒトと人工知能の融合,人間とコンピュータの共生,でも結局人間である私たちが未来を創り出すのだ。