ホーム > 教育研究所 > 気になる1冊 > 書評:小島宏の気になる1冊その891

教育研究所

書評:小島宏の気になる1冊その891

塚田 祐介 著 「その情報,本当ですか?-ネット時代のニュースの読み解き方」(岩波ジュニア文庫 本体:900円)


 著者は,「はじめに」でいみじくも「私が,いま一番心配していることは,"事実は二の次"という政治や経済,社会など,世の中全体の風潮です。"本当の事実"はともかく別にして,"自分に都合の良い事実"を集め,それを一方的に声高に主張し,他の人々との議論を避ける」と,警鐘を鳴らしている。

 新聞は読まない,TVは視聴しない,辞書や辞典を引かない,もっぱらスマートフォンやインターネットでぱっと調べ,それで済ましている。これで本当にいいのだろうかと,アナログ人間の私は心配する。

 何はともあれ,情報は,「検索する際,表示された検索結果の上位1つだけ読んでわかった気にならない」「どこからの情報なのか情報源を確認すること」「自分と異なる意見や解釈を大事にする」「複数の項目を読んで確認する」ことが大切と,著者は勧めている。大事にしたい。

1「相次ぐフェイクニュースの出現―何が本当の情報化(フェイクニュースをどう見分けるか,なぜ本当の事実を知らなければならないかなど7節)」,2「事実をどう集め,伝えるか―私がテレビでめざしたこと(現地に行って実際に体感する,徳島ラジオ商殺しえん罪事件の取材など7節)」,3「それはわずか数行の情報から始まった―緊急報道の舞台裏(1985年8月12日など5節)」,4「テレビとネット,どう見られているか(手放せないスマートフォンなど3節)」,5「インターネット情報はどう生み出されているか(インターネット情報はだれが責任を持っているか,ネット炎上とネットいじめなど5節)」,6「テレビだからできること―大きな時代の変わり目に(閉ざされた国境を越えたやけどの少年,北方領土の素顔など6節)」,7「多様な意見をどう生かすか―テレビと政治の現実(政治家と政治の現実,公平・公正な番組とは?など4節)」,8「ネット時代,ニュースや情報をどう読み解くか(ネット情報新たな提案など3節)」
と,充実した内容である。

 小学校高学年から中・高生に勧めたい。また,指導する先生方がざっと目を通しておいても役立つ1冊である。