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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その893
山中伸弥・羽生善治の対談「人間の未来AIの未来-人間が人工知能に支配される日は来るのか?」(講談社 本体:1400円)
本書は,人工知能(AI)に,囲碁の名人も,将棋の名人もかなわない時代である。そんなことを話題にしながら,国民栄誉賞の将棋7冠の羽生善治とノーベル生理学・医学賞のiPS細胞発見者の山中伸弥さんが,「人間の未来とAIの未来」について語り合ったものである。
病気に苦しむ患者の患部を,iPS細胞によって人工的に作り出し治療することが可能になる一方で,人工知能はいくつかの部分で人間を超えているかの状況である。人工知能の進化によって,人間の生き方,人間の生きがい,人間の創造性はどのようになるのだろうか。両者の専門性に基づいた,深く,鋭い洞察に「なるほど!」と納得しつつ,多くのことを学び取ることができる。
「まえがきにかえて―羽生善治から山中伸弥さんへ」,第1章「iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?(ブタの体内でヒトの膵臓を作る,裁断された足が再生する?など10の話題)」,第2章「なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?(負けるはずがないと思っていた,人間は忖度するから間違えるなど7の話題)」,第3章「人間は将来,AIに支配されるのでしょうか?(AIは怖いもの知らず,人間が働かなくていい社会,暴走するAIなど12の話題)」,第4章「先端医療がすべての病気に勝つ日が来ますか?(ヒトゲノム・プロジェクト,細胞バンクは公的機関が担うべきなど7の話題)」,第5章「人間にはできるけどAIにはできないことは何ですか?(藤井聡太4段(6段)は何が違うのか,AIにバッハの曲は作れても春樹の小説は書けないなど11の話題)」,第6章「新しいアイディアはどこから生まれるのでしょうか?(独創を生む3つのパターン(アインシュタインのような天才,他の人の考えているようだが自分も思いついた,誰も素晴らしいと考えているけれど無理だと諦めていることにあえてチャレンジする),教科書を否定するなど10の話題)」,第7章「どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?(寄付先進国アメリカに学べ,子供をノーベル賞学者に育てるには?など8の話題)」,第8章「十年後,百年後,この世界はどうなっていると思いますか?(人間は不老不死になれるのか,記憶は子孫に継承されるか,人類の選択が試されるなど6の話題)」,「あとがきにかえて―山中伸弥から羽生善治さんへ」