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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その907
中野信子著「シャーデンフロイデ―他人を引きずり下ろす快感」(幻冬舎新書 本体:760円)
「シャーデンフロイデ(Schadenfruide)」とは,なんとも衝撃的な書名である。なぜなら,その意味は「他者の不幸,悲しみ,失敗を見聞きした時に思わず沸き起こる喜び,嬉しさといった快感」だからである。
「なるほどそういうことだったのか!」「そう説明されればよくわかる!」という部分がたくさんあるが,「自分としては,どうも...」「理屈はわかるが,自分はそうではない...」という部分もあって,クリティカル・リーディングすると楽しく読み進めることができる。
書名に関連して,「嫉妬」と「妬み」が異なったネガティブな感情であるという説明は面白かった。そして,妬みにも「良性の妬み」と「悪性の妬み」があるというのである。また,オレオレ詐欺についても,詐欺師が被害者に寄り添ったふりをして「私を助けてくれるいい人なのね」と思わせることに成功しているから成功するのだそうである。性善説的な社会基盤が形成されている国に多発すのだそうだ。と,言うように。
第1章「シャーデンフロイデ(幸せホルモンオキシトシン,愛が憎しみに変わるとき,愛を利用する人たちなどの20の視点)」,第2章「加速する不謹慎(正義感が引き起こすサンクション(注:Sanction制裁,承認),ヒトの脳はだれかをさばきたくなるようにできている,脳はいつでも楽をしたいなど20の視点)」,第3章「倫理的であるということ(集団を支配する倫理,正義という名の凶器,用心深い現代の若者たちなど16の視点)」,第4章「愛と正義のために殺し合うヒト(集団リンチの裏側にある心理,生き延びてきたDNA,新しい民主主義を模索する時代に入ったなど12の視点)」と,社会現象の理解や自己分析の手がかりになる。