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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その910
諏訪兼位著「岩石はどうしてできたか」(岩波科学ライブラリー 本体:1400円)
地球は岩石からできている。だから地球の構成・生成発達史・環境変遷史・地下資源などの基本的問題の探究には岩石学が不可欠であるということから著者は,岩石学を志したということである。(「はじめ」より)
ところで,我が家には,シルクロードで拾った石,スペインの海岸の石ころ,ハワイ島や三宅島の溶岩,長野和田峠の黒曜石,トロイ遺跡の端っこに落ちていた石のかけら(現地案内人の許可を得た),ピラミッドの道端で拾った石(同),サハラ砂漠の砂,そのほか孫が集めた様々な石がごろごろしている。そのようなこともあって,書名につられて本書を読み始めた。研究者が書いた本なので,文章がきちんとしているうえに,根拠をしっかりと上げて書いてあるので,すらすらと読み進めるわけにはいかなかったが,宮沢賢治ほどではないが「石っこ博士」に近づいたように思っている。
「はじめに」,第1章「水生論の師を超えて火成論へ(ヴェルナーの体系的な地球生成発展し,エジンバラのハトン,層序学の父独学のスミスなど6節)」,第2章「火山から噴き出す岩石(火成岩とマグマ,玄武岩マグマの発生の高温高圧実験など8節)」,第3章「マグマが地下で凝固した岩石(花崗岩成因論と同位体,月の岩石事始めなど9節)」,第4章「堆積岩や火成岩を変える変成作用(いつでもできる片麻岩,北欧フィンランドの巨人エスコラなど8節)」,第5章「日本における変成作用の研究史(戦前の変成作用の研究史,戦後の変成作用の研究史)」,「おわりに」「参考文献」と,岩石に興味を持っている人,研究者を夢見ている人には,たまらない1冊である。