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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その911
池谷裕二著・きくちちき絵「パパは脳研究者―子供を育てる脳科学」(クレヨンハウス 本体:1600円)
著者は,脳に関する多数の著書があり,研究者だけでなく,脳と学び方に関連して高校生にもファンがいる脳研究者である。
ピアジェ(スイス1896~1980)が,自分の3人の子供の成長する過程の認知の発達を観察・研究し,子供と大人の認知は異なることを証明し「認知発達論」を発表した(私の能力ではよくわからないが,現在では,賛否両論があるらしい)。
本書は,著者の愛娘の子育てを通して,脳研究者の目線で観察したことを,子育て日記風に記録した「ほっこりもの」である。子育て中の両親,これから生まれてくる子供を心待ちにしている両親,子育ての一応終わった両親,孫の子育てにかかわっているジジ&ババにとって,それぞれの思いで楽しく読み進めることができる。ただし,著者がいみじくも「お子さんの成長について神経質になることなく,おおらかな目で見守る姿勢を大切にしてください」と言っているように,本書は子育ての指南書でなく,あくまでも父親と愛娘の日常生活の記録と感想なので,これを真似れば「良い子が育つ」と,思い込まないようにして,楽しんで読んで欲しい。
内容は,「はじめに―私流の子育て」,~1歳「赤ちゃんの脳はパパよりかしこい!―1歳までの子供の脳育ちフロー(1~4カ月,5~8カ月,9カ月~1歳,コラム3つ)」,~2歳「『自分』が生まれて『あなた』が分かる―2歳までの子供の脳育ちフロー(1歳1~4カ月,1歳5か月~8カ月,1歳9か月~2歳,コラム3つ)」,~3歳「体で,言葉で,コミュニケーション―3歳までの子供の脳育ち(2歳1~4カ月,2歳5~8カ月,2歳9か月~3歳,コラム3つ)」,~4歳「独り立ちしてなりたい自分へ―4歳までの子供の脳育ちフロー(3歳1か月~4カ月,3歳5か月~8カ月,3歳9か月~4カ月,コラム3つ)」と,研究者らしくない分かりやす文章と,ほのぼのとした挿絵で構成されている。
(余談であるが,平成30年8月6日(月)~7日(火),一般財団法人教育調査研究所主催の「展望セミナー」の第1日目に,池谷裕二氏の講演が予定されている。(☎186-03-3238-6974)