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書評:小島宏の気になる1冊その923

中澤渉著「日本の公教育―学力・コスト・民主主義」(中公新書 本体880円)


 本書の中で,アメリカの歴史社会学者デヴィット・ラバレーの学校の3つの目標「民主的平等(市民性の涵養,生徒の平等な扱い,教育機関への平等なアクセス)」「社会的奉仕(教育は公共財:教育の職業主義・生産性,学校教育の階層化・分化)」「社会移動(教育は私有財:教育は消費,他社との差異の強調,私的要求)」が紹介されている。なるほどと少し理解した。

 序章「教育の公共的意義とは何か」,第1章「社会変動と学校・家族(近代学校制度の発達と家族・地域社会,労働市場との関係の変化)」,第2章「学校と格差・不平等(競争や選択の自由と平等主義の矛盾,★子供の貧困と教育)」,第3章「教育政策とエビデンス(調査や社会科学の教育政策への貢献)」,第4章「教育の社会的貢献(学校教育の経済的意義と効果)」,第5章「教育にできること,できないこと(より広い意味での公共教育の意義の考察)」,「参考文献」で,構成されている。

 教育行政に関わる人,教育委員会の指導主事,子供の貧困を教育面から考える人,学校の管理職にある人に是非とも読んでいただきたい1冊である。

 特に,ヨーロッパのある国のように,小学校から大学まで学校教育のすべてを無償化するか,現在の日本のように,小・中学校は義務教育として無償化するかについても,財源の確保や家庭の経済力,本人の学習意欲などの観点から考えたい。