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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その931
真金薫子著「月曜日がつらい先生たちへ・不安が消えるストレスマネジメント」(時事通信社 本体:1600円)
希望に燃えて大学で学習し,せっかく難関の就活(採用の試験と面接)をクリアーして教師となったのに,教職を去っていく若手教師が少なくない。勿論,子供のこと,保護者のこと,自分自身の体や心のことで困難や悩みごとを抱え,なんともし難くなって離れていく中堅・ベテラン教師も珍しくない。
そんな先生方に,心の健康を取り戻し,自分が教師として一番したい「子供たちの健やかな成長」に役立ちたいという思いを実現できるようにと,著者が,たくさんの悩める教師に向き合ってきた「専門医」としての医学的,人間的な方策とメッセージを綴ったのが本書である。
かつて,私も,悩み落ち込むことがあって離職を考えたとき,著者のある雑誌の相談コーナーの助言を読んで,我を取り戻し教職を全うしたことを懐かしく思い出した。(真金先生,その節はありがとうございました)
本書は単なる啓蒙書ではなく,「学級経営がうまくいかない」「仕事が忙しくくたくたである」「人間界畏敬や保護者対応で苦しい」「月曜日は出勤したくない」「ちょっと頑張りすぎかな」「つらい,嫌だということが頭から離れない」「後輩や同僚との付き合いがつらい」などで悩んでいる先生が,読んで,具体的に「何を」「どうしたらよいか」を知り,前向きに向き合うための本である。ただし,自分一人で抱え込まず,信頼できる先輩・同僚,上司,専門家に相談することが不可欠である。「求める人は,絶対に,希望の光がさしてきます」と,体験者の私は断言できる。
中身は次のような構成になっている。一気に読んでもいいが,自分の気になる項目を読んで,必要に応じて活用することをお勧めしたい。
第1章「やりがい転じてストレス化しやすい学校現場!(人間関係ばかりの職業,多様化し難しさが増している子供への指導,学校も例外ではないジェネレーションギャップなど5つの特徴の解説)」&コラム1,第2章「心の病にはどう能なものがあるのか(うつ病,パニック障害,強迫性障害,統合失調症,パーソナリティ障害など9つの症状の紹介)」,第3章「事例解説!心の病になった先生たち(職場全体の支えで休まず回復できたベテラン男性教諭,危険な異動初年度職場から孤立していった中堅リーダー,ミスが増え始めた教頭病院で受けた診断はなど15のCASEの解説)」,第4章「学校の先生にお勧めしたいストレスマネジメントアラカルト(セルフケア,職場のストレスマネジメント,メンタルヘルス不調者が出た場合の解説)」&コラム2・3・4,第5章「職員室の心の不調「早期発見」のチェックリスト(セルフケアのチェックリスト,ピアサポートのためのチェックリストの例)」,第6章「受診のタイミング もうダメ,と思う手前で(のタイミングと相談・受診先,初診時の流れ,受診後の心構えの説明)」,第7章「学校の先生が知っておきたい職場復帰の基礎知識(「休暇」を経て「休職)となる,「職場支援プログラム」の大切さ,周囲に求められる心構え)」と,心配な教師,悩んでいる教師だけでなく,校長・教頭,教師のメンタルヘルスに関わっている方にもぜひお勧めしたい。