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書評:小島宏の気になる1冊その932

初等教育研究会編「教育研究2018年5月号」(不昧堂出版 本体:787円)


 本誌を手にすると,算数教育ではあまりにも大きな存在であった中川三郎先生を思い出す(現在の若い人は知らないかもしれない)。直接ご指導頂いただいただけでなく,日数教の研究部の一員に加えていただき勉強の機会を与えて下さった。日数教編「算数教育用語辞典(初版)」教育出版の編集に関わったことは懐かしい思い出である。

 ところで,坪田耕三先生は,算数教育に関係している人なら知らない人はいないだろう。実は,本誌の購読を始めたのは,坪田先生からの紹介であった。昭和60年代のことである。その坪田先生が,今春,薬石の効なく惜しまれながら黄泉の国へ旅立った。坪田先生の論理明解,難しいことをわかりやすく楽しく語る姿が瞼に浮かぶ(合掌)。スミマセン,横道にそれました。

 本誌の今月号の特集は,「道徳の授業と評価」である。道徳科になったことは,素直に受け入れて授業改善に取り組んでいるが,道徳科の評価となると「内心に踏み込む評価をするの?」と,いまだによく分からないと,悩んでいる先生方が少なくない。その悩みに,応えてくれるかどうか,まず御一読願いたい。

 「評価の重視は道徳授業の質的転換につながるか(道徳教育における評価研究,指導と評価の一体化,道徳授業における評価の在り方など)」筑波大学教授吉田武男,「現代の子供の課題に即応した心の教育を考える」カウンセリング研修センター学舎「ブレイク」室長大熊雅士,「これからの道徳授業の指導と評価を考える(教科化で授業はどう変わるか,形勢的評価と総括的評価など)」千葉大学教授土田雄一,「道徳の教科化再考(道徳科の指導法,道徳科の評価など)」筑波大附属小教諭山田誠,「教科化によって何が変わるか(評価の在り方,子供の道徳性の評価など)」同加藤宣行と,精読すると「きらりと光る石」があちらこちらに散らばっている。

 加えて,「先生方のための聴き方・話し方:言葉は「個」に伝える」元NHKアナウンサー岡田達昭や,恒例の附属小の先生方の研究発表「保健,体育,音楽,総合,社会,国語」などもいつもながら「なるほど!早速取り入れてみよう」という内容が満載である。