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書評:小島宏の気になる1冊その938

下重暁子著「極上の孤独」 (幻冬舎新書 本体:780円)


 著者は,孤独は素晴らしいことだと,体験を通して,確信をもって肯定しているし,実践している。それが,全編を通して,焼き鳥の櫛のように「ズバッ!」と貫いている。

 「そのとおりだ!」と容認しながら読める部分と,「それはないでしょ!」と反論したくなる部分が程よく混じっていて,楽しく読み進めることができた。

 内容は,著者自身の体験から帰納した内容で,第1章「なぜ私は孤独を好むのか(なぜ誰もが孤独を嫌うのか,淋しさと孤独は別物,スマホが寂しさを助長する,孤独でウツになりそうな時は?など11節)」,第2章「極上の孤独を味わう(他人に合わせるくらいなら孤独を選ぶ,だから一人は面白い,素敵な人はみな孤独,主婦は孤独なのかなど9節)」,第3章「中年からの孤独をどう過ごすか(一人の時間を大切にすると夢がかなう,一人好きは自分のペースを崩さないから健康になる,アイボ君で孤独は解消する?など11節)」,第4章「孤独と品性は切り離せない(万人を魅了した大物歌手はみな孤独,品のある人はどこが違うのか,組織のトップはみな孤独など11節)」,第5章「孤独の中で自分を知る(絶望したからこそ得られること,秘密基地を作ると楽しみが増える,孤独な人はいい出会いに敏感になるなど10節)」で,孤独のすばらしさが,これでもかこれでもかと繰り返して説かれている。

 著者の言う「孤独」と,TVや新聞で報じられる孤独死の「孤独」は全く異なるように思うが,読みが浅いせいかもしれない。それに,著者のいう孤独には,才能的に,経済的に,哲学的に,かなりのレベルでないと無理かもしれないと,体も脳も劣化し続けている自分には思えて仕方がない。でも,この本は楽しかった!