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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その939
美波利幸著「上司が壊す職場」 (日経プレミアム 本体850円)
なんとも働きにくい職場がある。その要因には様々な事柄があるに違いない。その一つに,「?」な上司の存在がある。それを,事例研究を通して明らかにしたものが本書である。
すでに上司の立場にある人は,自分が職場を壊し,部下のやる気を停滞させ能力発揮を抑制して業務の成果を停滞させていないか,振り返り,もし少しでも本書のような傾向があれば自己改善をするヒントが得られる。また,「?」の上司の存在で悩んでいる(困っている)人にとっては,その対処法を考えるヒントが得られるであろう。学校現場の「校長,副校長・教頭」と「教職員」の間にも通じる部分もかなりあるような気がする。
本書の目次の後にある「あなたの上司はどのタイプ?「危険な上司」診断」のチェックリストは,上司の立場の人にとっても,「?」な上司に困っている人にも役立つ資料が得られるであろう。
内容は,1章「7割は上司が原因(壊れた職場があればまず上司の存在を疑う,無自覚にパワハラ事件を起こし続けるなど12の視点)」,2章「部下の感情がくみ取れない―機械型(ルールの逸脱は許さない・部下の工夫は認めない,いつか気づいてくれると期待すると裏切られるなど12の視点)」,第3章「職場は敵と味方しかいない―激情型(部下の些細な一言で突然の逆上と罵声,敵か味方かというシンプルな世界観,すべては好き嫌いで決まるなど13の視点)」,4章「自分は優秀をアピールし続ける人々―自己愛型(自分のミスは部下のミスの背景,部下の手柄は自分のおかげが過剰すぎるなど13の視点)」,5章「部下は自分の出世の道具―謀略型(判断基準は自分の評価・成果だけ,経営層との教理が近く問題発覚が遅れるなど13の視点)」,6章「危険な上司は変われるか(他人の気持ちに思いをはせられない,危険な上司を生み続ける危険な会社など7つの視点)」,7章「危険な上司を生まない会社(人気企業・有名企業には危険な上司が少ない?,なぜあの人が...の人事が根本要因など13の視点)」で構成されており,様々な立場の人にとって,「上司」と「部下」のよりよい関係を築くために多くのヒントを読み取ることができる。
なお,類書に,美波利幸著「心を折る上司―管理するだけの上司よサヨウナラ!」(角川新書,本体800円)がある。