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教育研究所
書評:寺崎千秋の気になる1冊 944
飯田 隆 著「新哲学対話~ソクラテスならどう考える?」(筑摩書房 本体:2300円)
今から百五十年ほど前に西洋の哲学が日本にもたらされたとき,当時の日本語では表現できずにそのための言葉が新しく作られなければならなかった。それら特別の用語による哲学が日常の生活用語で哲学することが可能になるためには多くの年月を要した。
著者は慶應義塾大学名誉教授で科学基礎論学会理事長や日本哲学学会会長を務められ,著書に「言語哲学大全」など多数を刊行され現代日本の哲学界に絶大な影響を及ぼしてきた。その著者が現代哲学の超難問をソクラテスと古代の賢人による日本語=日常語での対話に著すと何が見えてくるのだろうか。
主題は「よい/悪い」に客観的な基準はあるか?」「人口知能は人間と同じように思考することができるのか?」「言葉の意味とは一体何か?」「「知っている」とはどういうことか?」の四篇である。
学校において「対話的学び」が重視されている今日,「対話」をどう受け止め実現させればよいか,それを「深い学び」にどうつなげればよいかが教育実践上の大きな課題となっている。哲学の難問が日常用語での対話でどのように展開されるのか。読んでいると「対話」とはこういうことかと実感させられる。