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教育研究所
書評:寺崎千秋の気になる1冊 945
鹿毛 雅治・藤本 和久 編 「『授業研究』を創る」(教育出版 本体:1800円)
本書の冒頭でも鹿毛氏は,日本型授業研究が世界的にも高い評価が与えられているが,我が国の教師たちには必ずしも意義ある仕事として受け止められていない。その背景として,授業研究が「業務化」「形骸化」「非日常化」していると問題提起する。
本書では「授業研究」を「一人ひとりの子どもの学びや成長を促すための教師の学びや成長を支える研修システム」とている。この視点から「授業研究」をあらためて捉えなおし,その活動を充実させ発展させるための条件や課題,あるべき方向性などについて具体的に検討し授業研究のあり方を論じ紹介する。全体は以下のように4部10章構成である。
第1部:授業研究を問う 1章 授業研究を創るために/2章 授業研究の主体は誰か/3章 教師は授業研究をどう経験するのか
第2部:授業研究に臨む 4章 実践経験者から生み出される授業記録と意味解釈/5章 教師と研究者との対話に基づく校内研修の充実/6章 子どもの思考と人間形成に視座におく
第3部:授業研究に期待する 7章 子どもの生き方の連続的発展/8章 個性的存在として今この時を生きていることを語り合う/9章 「授業研究」の質的転換
第4部:授業研究を展望する 10章 日本の授業研究の独自性とこれから
一見して分かるよう,授業研究の全てを実践的な視点で捉え論じている。授業研究は「創る」ものであり考え悩み生み出していくものである。そこに教師も子供も成長する喜びを実感する。本書は校内研究の導き役となる必読書である。