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教育研究所

書評:寺崎千秋の気になる1冊 946

岡田 尊司 著「人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるか」 (新潮文庫  本体:480円)


 人間アレルギーとは,物質に対する身体的な免疫反応ではなく,心理的,社会的な反応としての人間に対する心の免疫反応をいう。異物として認識した人に対して拒絶と攻撃による排除を行うものである。職場などでの様々な人間関係において人間アレルギーが生じると,対人関係に過敏で傷つきやすい,ネガティブな感情にとらわれる,怒りと攻撃性をもてあます,寛容さや受容性が低下する,摩擦,対立,孤立を自ら招いてしまう,大同よりも小異に反応する,自分の視点にとらわれる,最も信じていい人とさえ戦ってしまう,自分自身さえ信じられなくなる等々,まことに生きづらい状況を作りだし,健康や寿命にも悪影響を及ぼす。

 なぜこのようなことになるのか,そのメカニズムはどうなっているのか,例を豊富に示して分かりやすく説いてくれる。そして,人間アレルギーは不治の病ではなく,自己回復の仕組みを利用するとともに,原因と症状それぞれに適切なステップを踏んで対応することで克服できると丁寧に論じ納得できる。

 人間関係における自分を見直す視点(共感性,自己省察力)も併せて考えさせてくれる。