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書評:小島宏の気になる1冊その956

前野ウルド浩太郎著「バッタを倒しにアフリカへ」(光文社新書 本体994円)


 TV番組で,著者が出演して,バッタに農作物を食い荒らされて困っているアフリカのサハラ砂漠モーリタニアへ,バッタ退治に行っていることが放映されていた。その時は,純粋な日本人の昆虫学者(通称:バッタ博士)がいるものだくらいに,感動していただけだった。

 翌日,放り出してある孫の鞄の中を見たら「バッタを倒しにアフリカへ」という本が入っていた。「この本,貸してよ」「駄目!今,勉強に使っているんだから」「じゃあ,読み終わったら貸して」「いいよ!」ということになり,3週間後に貸してもらって読んだ。

 まず,驚いたことは,バッタを研究しているのに,バッタアレルギーで触るとじんま疹が出てしまうらしい。バッタに14年間も触り続けたためだそうだ(「まえがき」より)。

 実況放送かと思われるくらいの臨場感溢れる文章と写真で,著者の研究ぶりとバッタ退治にまつわる様子が伝わってくる。昆虫の苦手な人も十分に楽しめる好著である。

 第1章「サハラ砂漠に命を賭ける(バッタ家族,砂漠のおもてなし,無計画作戦など15の話題)」,第2章「アフリカに染まる(ウルドへの誓い,超手抜き会話術,博士の日常アラカルト13の話題)」,第3章「旅立ちを前に(ファーブルを目指して,神の罰=バッタの大発生など8つの話題)」,第4章「裏切りの大旱ばつ(迫りくる黒い影,第二回バッタ買い取りキャンペーン,リベンジなど22の話題)」,第5章「聖地でのあがき(サハラに散りかける,仏になりかけるなど12の話題)」,第6章「地雷の海を越えて(冷血動物のあがき,未確認飛行物体,消えた黒い影など11の話題)」,第7章「彷徨える博士(下を向いて歩こう,一寸先はヤミ,面接vs京大総長など18の話題)」,第8章「神の罰に挑む(痛恨の一撃,飛蝗襲来など9つの話題)」,第9章「我,サハラに死せず(ウルドの旅立ち,ラスト・サライなど5つの話題)」で,展開されており,楽しく読むことができる。