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書評:小島宏の気になる1冊その960

ドナルド・キーン著,足立康訳「果てしなく美しい日本」(講談社学術文庫 本体:1100円)


 著者はコロンビア大学卒業・コロンビア大学東洋学部名誉教授で,アメリカ出身の日本文学・文化の研究者で,東日本震災後に日本国籍を取得し,日本に永住している。現在,96歳である。

 日本文学・文化に関する著作は日本語版がおよそ30冊ある。英語版もおよそ20冊あり,そのうちの1冊が本書である。

 書名のように,著者の日本・日本文学・日本文化に対する思いは,並々ならないものがあり「世界の文化が将来どのような道を歩むにしろ,日本が主要な貢献をなすことは間違いありません」と断言するほどである。

 日本人は自国の文化・文学を再認識して,海外の文化・文学に学ぶことや融合は大いにあったにしても,日本流の文化・文学を進化,発展させなければならないとつくづく思った次第である。「日本人の日本知らず」を知らされたような思いである。

 第一部「生きている日本」―第1章「島国とその人々」,第2章「古い日本」,第3章「新しい日本」,第4章「日本人の一生」,第5章「四つの信仰」,第6章「農民と漁師と工場と」,第7章「東洋的民主主義」,第8章「教育―大論争」,第9章「楽しみの世界」,第10章「創造者としての日本人」。第二部「世界の中の日本文化」―日本人の世界意識,黄金の国ジパング,出島・世界を知る窓,不可解日本はまだ健在,日本文化を世界へなど19節。第三部「東洋と西洋」で構成されており,クリティカル・リーディングをすれば日本を見直すきっかけとなる。