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書評:小島宏の気になる1冊その968
荻生徂徠原作・近藤たかし漫画「政談」(講談社まんが学術文庫 本体:600円)
恥ずかしながら原作で荻生徂徠(おぎゅうそらい)の「政談」を読んだことはない。この漫画でおおよその内容がわかった(ような)気がするので,機会を見て読み,江戸時代にどのような影響を及ぼしたのか学習したいと思っている。
社会科の授業で学習したことを思い出すと,荻生徂徠は江戸中期(1666年~1728年)に活躍した儒学者である。そして,「政談」は,江戸時代の政治・経済・社会に関する問題点とその解決策を書いた意見書で,八代将軍徳川綱吉に命じられて(諮問されて)献上した(答申した)ものである。
内容は,「1国を治める方法の根本」「2取締りのこと」「3譜代者のこと」「4せわしい風習を改める」「5荻生徂徠」「6武家の旅宿を改める」「7主と客を正す」「8才徳を見分けること」「9人材登用のこと」「10あなたはSORAIを信じますか?」について,AI(人工知能)を搭載したロボットSORAIを登場させ,江戸時代の最先端の提言を,現在に当てはめてみたらと(結構真面目に)面白おかしく対比させて考えさせてくれる。
例えば,江戸時代の「住居は,会社や業種ごとにまとめる」や「原則,他の県に引っ越してはならない」は,どうでしょうか。また「無職(無職,契約社員,フリーター)は禁ずる」も無理がある。
でも,「全ての商品に厳しい基準を設け,粗悪品を販売することは禁ずる」は,今も必要なことで,むしろ今こそ徹底したいことである。
江戸時代のどれに対応するかはわからいが,「議員の世襲を禁ずる」「成績優秀なものには奨学金を与え,家庭の経済事情に関わらず進学できるようにする」「公務員においてはキャリア,ノンキャリアなどの区別を廃止して,能力によって積極的に登用する」などが巧妙に挿入されていて,「その通り!」と思わず膝を叩いてしまった。