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書評:小島宏の気になる1冊その972

涌井良幸著・子供の科学編集部編「数・表・グラフを自在に使ってビッグデータ時代を生き抜く,統計ってなんの役に立つの?」(誠文堂新光社 本体:1200円)


 AI(人工知能)が,将棋や囲碁,チェスで人間の名人に常勝していることは残念ながら認めざるを得ない状況である。AIはとてつもなく優秀な頭脳を持っていると恐れおののいている傾向があるが,実は,人間よりビッグデータを活用の仕方が優れているに過ぎないということである。

 それはさておき,これからの社会は,データを活用して考えたり,判断したり,表現(説明)したり,問題(課題)を解決したりする能力が求められる時代である。ということは,小学生にも,中学生にも,高校生にも統計教育(データの活用の仕方を学ぶ学習)が必要になってくる。そこで,新学習指導要領では,算数・数学科に従来の統計教育を見直し,新しい領域「データの活用」が新設された。

 本書は,小学校高学年を対象にして,「統計の考え方」「データの活用の仕方」などを日常生活の色々な場面に即して学んでもらおうとして企画したものである。新小学校(中学校)学習指導要領に基づいており,内容の濃いものである。内容の構成は次のようになっていて,小学校高学年及び中学生に役に立つとともに,指導する教師にとっても,新しく小学校に導入された事柄を学ぶためにも格好の1冊である。

 Part1「統計を学ぶとどうなる?(エンジニアや博士は統計の達人だ!,将来を予測できる,インチキを見抜くなど9節)」,Part2「データをまとめてよう(資料の整理をしてみよう,度数分布グラフを作ってみよう,平均値・中央地・最頻値ってなんだ?など13節)」,Part3「確率ってなんだ?(注:中学校の内容:やってみた確率,期待値って?など7節)」,Part4「統計で世の中が見えてくる(注:中学校の内容:わずかなデータで全体を見抜く,標本の採り方は2通りなど4節)」,Part5「統計センスをみがこう(注:中学校の内容:お米を巻いて円周率が分かる,サイコロを振って自由研究,データがたくさんあると正規分布になるの?,期待値を使って賢く選ぶなど16節)」。