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書評:小島宏の気になる1冊その973

松岡正剛著「17歳のための世界と日本の見方―セイゴウ先生の人間文化講義」(春秋社 本体:1700円)


 本書は,日本文化の研究者による,まだ新鮮な大学1年生の学生を対象にした「世界と日本の見方」に関するの講義録である。

 大学生のために著したものであるが,中学生や高校生にもいいかもしれないし,大人が読んでもたくさんの「新しい世界と日本の見方」を知ることのできる1冊である。何より気に入ったのは,表現が分かりやすい上に,説明が丁寧で,こんなことまでというような雑事(冗談で言っているような部分はすぐわかるので,無視するか笑い飛ばす)まで教えてくれることである。

 内容は,第1講「人間と文化の大事な関係(関係は変化しやすい,ノックの文化・においの文化,感覚のコミュニケーション,サルが立ったらヒトになるなど16の話題)」,第2講「物語のしくみ・宗教のしくみ(物語と言語,英雄伝説の散弾構造,ユダヤ教の光と闇,ブッダの生涯,中国仏教の特徴,神教と多神教,理性と都市の文化など19の話題)」,第3講「キリスト教の神の謎(イエス・キリストとは何か,それでは神とは何か,アウグスティネスの告白,魔女というコントロールなど13の話題)」,第4講「日本について考えよう(日本らしさとは何か,日本神話からわかること,カミとホトケの戦い,全の感覚と引き算の魅力など17の話題)」,第5講「ヨーロッパと日本をつなげる(異教の知・ルネサンスの幕開け,人間はマクロとミクロを考える葦,禅宗から法華へ,世界が街の中でも見えてくるなど13の話題)」と,多岐にわたる。

 この講義は,毎年前期に行われているようなので,本書を読んで,当日はこれを枕にしてゆっくり熟睡する学生がいるかもしれない。