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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その974
北村良子著「論理的思考力を育てる33の思考実験」 (彩図社 本体:1300円)
論理的思考力は,表現の仕方は変わっても,算数・数学科(数学的な見方考え方,数学的な思考力)や理科(科学的な見方考え方,科学的な思考力)などで育てたい資質・能力の中核と言って間違いないだろう。
ということで,書名に誘惑されて読むことになった。特に,「はじめに」の「パズルと思考実験は脳を鍛えるために非常に有効であり,しかも楽しめるという点で共通しています」ということが気に入った。なぜかというと,知り合いのMH医師から「認知症にかかりにくい脳を活性化する『智』的活動の開発」を投げかけられ,ありもしない『脳味噌』を鞭打っているからである。
内容は,「さあ! どうする?」という危機的場面に立たせて,思考せざるを得ない状況に追い込み,「思考実験」をさせるという仕掛けになっている。ちょっと考えて自分の判断をしてから,よくわからなかったら,著者の解答例を見て「そういうことだったのか」と,軽く読み進めていくうちに「思考実験」の体験が積め,論理的思考力が伸びているという副産物が得られるかもしれない。
そして,電車やバスの中で,公園のベンチに座りながらなど日常生活で「思考実験」を楽しんでもらいたい。内容は次のような構成になっている。
第1章「倫理観を揺さぶる思考実験」<暴走トロッコと作業員,完全平等な臓器くじ,6人の患者と薬,村のおたずねものなど8つの思考実験>,第2章「矛盾が絡みつくパラドックス」<テネウスの船,アキレスと亀,タイムマシン物語など6つの思考実験>,第3章「数字と現実の不一致を味わう思考実験」<モンティ・ホール問題,トランプの軌跡,見抜く質問,2つの封筒,ありえない計算式など12の思考実験>,第4章「不条理な世の中を生き抜くための思考実験」<抜き打ちテスト,生きるための答え,共犯者の自白,コンピュータが支配する世界など7つの思考実験>。