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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その984
伊藤穣一&アンドレー・ウール共著「教養としてのテクノロジー」(NHK出版新書 本体:780円)
AI、仮想通貨、ブロックチェーンなどテクノロジーが急速に進化している。本書は、「経済」「社会」「日本」という3つの視点から日本人はどう変わるべきかと提起し、専門家の2人が提言している。
第1章は「AIは労働をどう変えるか?(コンピュータがすべてを実現してきた、AIが人間を代替する、あなたの労働に人生の意味はあるかなど15節)」で 経済の未来「労働」について、第2章は「仮想通貨は国家をどう変えるか?(新たな資金調達法ICOとは何か、インターネットバブルの再来など18節)」で経済の未来「国家」について、第3章は「ブロックチェーンは資本主義をどう変えるのか?(ブロックチェーンとは何か、価値はコミュニティの人と人の間にあるなど19節)」で経済の未来「資本主義」について、第4章は「人間はどう変わるか?(そもそも人間とは何か、自動運転は倫理が問題だなど17節)」で 社会の未来「人間」について、第5章だけアンドレ・ウール著で「教育はどう変わるか?(ロボットを育てても意味がない、何をもって成功なのかなど9節)」で社会の未来「教育」について、第6章は「日本人はどう変わるべきか?(イノベーションよりもプロセスが大事、インターネットという場など15節)」で日本の未来「日本人」について、第7章は「日本はムーブメントを起こせるのか?(アフターオリンピックの課題、日本が忘れている良さを思い出すなど14節)」で日本の未来「日本」について、実に107の視点から論じている。
職業柄「第5章 教育編」が気になった。アメリカでは、既存の事柄を打ち壊していく大統領に影響されたわけではなさそうだが、「大人が子供の教育をせず」、「子ども自身が興味を持ったことを大事にする」ことを重視した、「学校教育の外」で「今を生きる」アンスクーリングだそうだ。「子どもが探求する」手助けをするという「新しい学び方」のスタイルなのだそうだ! 学校に行って「ロボット」を育てて意味があるのか、価値観を変える「アンスクーリング(非学校教育)」で自発的に学習させる、「コンペティション(competition 競争)」より「コラボレーション(Collaboration 共同作業)」が大事、インターネットだけでなく博物館や図書館など自由に人とつながれる場が必要、アンスクーリングをもっと普及させる、「何をもって成功」とするかは人それぞれで「今を生きることの大切さ」を知ってほしい、「マインドフルネス(mindfullness 禅の今この瞬間の自分に深く注意を向けるの意)」が大事、大人と子供がお互いから学ぶなど、実に考えさせられる内容だった。全てを肯定するわけではないが。