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書評:小島宏の気になる1冊その987

保坂正康著「人を見る目」(新潮新書 本体:760円)


 随分前に「人は見た目が九割」(?)という本を読んだ。一方「見た目で人を判断するな」とも言われる。自分は,「人を見る目がない」と自認している。素晴らしいと思っていた人に疎んじられたり,マアマアと感じた人がとてつもなく感動的な人だったりするからである。でも,普通に「いい人だ!」と思った人は百発百中で外れたことはない。

 本書は,何千人という著名な人に会って,体験的にとらえた人物像を,20に分類してやや大げさに特徴をまとめたものである。学問的な価値については浅学非才の自分には判断できないが,「読み物」として読めば,知人友人,家族との話題になる面白い内容である。ただし,これはこの人だなどといらぬ想像をしないよう...。

 ネタばらしにならないように,目次(キーワード)だけを紹介する。
 「お追従...権力中心に演じられる百態」,「お節介...善意が転じて悪意となるとき」,「しみったれ...哲学や思想なき打算」,「わろき者...冷めた目で交友を見る」,「よき友...人間同士の地肌が合う」,「機嫌を知るべし...生きていくための知恵」,「考える葦...人間性が試されるとき」,「天使と獣...性善と性悪のあいだ」,「臆病者...恐怖にこころくじける人」,「横柄...自己の利益のみに忠実なさま」,「いやがらせ...他人を不快にさせて楽しむ」,「空とぼけ...人を騙す手法の罪」,「善の善なる者...戦わずして勝つための務め」,「微笑の習慣...気に入られるための防衛策」,「人の操もかくてこそ...一人になっても見事に生きる」,「人性の正しい姿...真実の人間に出会うとき」,「露落ちて花残れり...はかない人生の残り香」,「無色界...凡夫の苦しみを克服する」,「飛蛙の音...悪しき社会減少への反撥か」,「百代の過客...悠久の時の一瞬を生きる」。