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書評:小島宏の気になる1冊その988

田嶋幸三著「言語技術が日本のサッカーを変える」 (光文社新書 本体:720円)


 ロシアでのサッカーW杯で,前評判を覆して,日本が決勝トーナメントに進んだことで,日本中がわきに沸いた。(その後の結果についてはあえて触れない)

 そんなことがあって本書を手に取った。そして,驚いたのは,昔の日本のサッカー選手は,日常の生活がきちんとしていない・・・服装や言葉遣いがだらしない。自分で考え決定したプレーができない・・・監督やコーチの指示や顔色を窺っている。自分の行動や意図をはっきり語ることができない・・・表現力も説明力がなく,自分のプレーの意図が説明できない。等々の指摘です。

 サッカーだけではないぞ,高校野球でもいやプロ野球でも1球ごとに監督のほうを見て指示・サインを確認している。必要なのかもしれないが・・・。

 「いまそら」「しぶごじ」「サラメシ」などなんでも短く省略する,自分の考えや意見をはっきり表明しない,「これがご注文の天丼になります」&「お名前をいただけますか」などと不可思議な言い方をする,「もし不快な気持ちにさせたとしたらお詫び申し上げたいと思います(不快な思いをさせて申し訳ありません。お詫び申し上げます)」等々,言葉遣いがいい加減な風潮は確かにある。これが,サッカーの強さに関係するとは驚いたが,うなずける部分が多かった。

 サッカーはもう30年も前に引退したが,日常生活の中で「言葉遣い」を意識して,充実した生活につなげて生きたい。

 「はじめに(ベンチを見ないイタリア・チーム,サッカーを論理的に考えるなど4節)」,1章「言語技術に挑戦するJFAアカデミー福島(ヨーロッパ遠征の衝撃,言語技術への取組など9節)」,2章「実践!ことばを鍛えるトレーニング(「再話」トレーニング風景,指導者ライセンスにおける論理力アップのメニューなど8節)」,3章「論理でパスするドイツ・サッカーなぜいま言語技術か➀(ドイツ留学で考えた「バカ蹴り」の意味,ことばの力と言語教育など8節)」,4章「世界との差はー判断力ーなぜいま言語技術か②(Jリーグ初期日本人監督が激減した理由,クラマーが残した課題,判断できない日本サッカーなど6節)」,5章「監督のことばが,選手を伸ばす(外国人監督たちのキーワード,オシムの言葉など6節)」,6章「論理プラス非論理―日本流サッカーの夢へ(Jリーグ百年構想,サッカーの世界史から何を学ぶかなど6節)」,名言録➀練習は嘘をつかないなど,名言録6つ。