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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その992
「児童心理2018年7月号」 (金子書房 本体:848円)
情報,特に遊びの情報が氾濫している現在,子供たちにの知的好奇心をくすぐり,学習意欲を高めることは至難のことであり,教師は悩んでいる。このような状況に正対したのが今月号の特集「学ぶ意欲を高める」である。
ネタばらしをしないように内容を紹介すると,中谷素之「これからの時代に求められる学びの力とは」,藪添隆一「子どもの学び意欲を阻むもの―やる気を育む夢を生み出す援助について」,上原泉「発達段階をふまえて学ぶ意欲を高める」,<学習意欲を高める>櫻井茂男「エンゲージメントを大切にする」&柳沼良太「メタ認知力を高める」&渡辺貴裕「学ぶ意欲が求められる学びの質を問う」&田中博之「子どもが学びたくなる学習コミュニティづくり」,「AI時代に必要な学びとは何か」三宮真知子。
そして,<学ぶ意欲のない子どもを持つ親への助言>中嶋郁雄「何度言っても宿題への取り掛かりが遅いのですが」&山口菜穂子「成績が上がらないのは,勉強の仕方がわからないのでしょうか」&坂井恵美「ぜったいむり!という思い込みからの脱出」。さらに,小松恭弘「子どもの個性を生かし,やる気を育てる習い事や塾選びのコツ」&猪原啓介「読書好きが学習のベースをつくる―教育・発達心理的観点から」&添田晴雄「学び合う家族風土の中から勉強の土台を作る」と続いている。極めつけは,<学習意欲を高める指導例>ということで白松賢「子どもが問いをつくる―PBL(注:問題解決学習)の取組」&岡田博元「対話のある授業展開のために―この学びの重なりから対話を生み出す」&小野健太郎「テストの不安や怖さの解消」そして田上不二夫「楽しく学ぶ」と,実践例まで紹介されていて圧巻である。
これらをヒントにして,目の前の子どもに合った処方箋で,「やってみたい」という子供を育て,それにこたえる「質の高い授業」を展開し,「勉強って面白い」「もっともっと〇〇について勉強したい」という子供を育ててもらいたい。
また,新連載第1回は,野坂祐子「子どもの性被害と性加害―子どもへの性暴力の特徴」である。
なお,「学習意欲」と「生活習慣」は関連があるとも言われる。本誌6月号の特集は「生活習慣の点検」である。余計なことであるが。