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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その996
大岸良恵著「人の気持ちがわかるリーダーになるための教室」(プレジデント社 本体:1728円)
上司と部下,リーダーとメンバー,リーダーシップとマネージャーシップ,リーダーシップのフォロアーシップと,いわゆる上下の関係はとかく難しいものである。著者は,そのポイントは「人の気持ちの分かること」即ち「情のあること」にあるという。リーダーとメンバーの関係がうまくいかない場合のリーダーに言える傾向は,「知・情・意」のバランスの悪さ,特に人の気持ちが分かる「情」の力が足りないことが多いそうである。
学歴が優秀で,それなりの経歴と実績があるのに,妙に居丈高に断定的に指導・指示するので,部下からの信頼が今一つと言うことが,少なくないようだ。
リーダーあるいはマネージャーになる人,学校で言えば校長先生または副校長・教頭先生にあたる人は,毅然とした面は必要であるが,部下あるいは教職員の気持ちが分かる「情」のある人になることが求められると提言している。ところが難しいのは,人の気持ちの分かる「情」というものは,他の人が外から指導・教え込むことができないのだそうだ。
そこで,著者は,本物のリーダーになるためには,良書を読み「知・情・意」を学ぶべきだと推奨している。良書を読んで,心を揺さぶれる体験を通して「情」が会得されるというのである。なるほど,読書によって,間接的に広く様々の定見ができ,感動することを通して「情」が磨かれるというのである。
著者は本書の中で,「情」のあるリーダーになるために役立つと思われる14冊の本,関連するものを含めて31冊の本を取り上げ,紹介している。そのうち読んでみようと思う。
ところで,著者は,校長先生と副校長・教頭先生の仕事に関連して,「リーダーとして必要な『導く』仕事」と,「マネージャーとしてチームを『動かす』仕事」の違いを認識するべきと助言している。日本には,マネジメントの意識が薄く,トップダウンで命令するリーダー的なマネージャーが多いのだそうだ。チームを動かすには,部下や教職員のニーズを満たす「サティスファイ」ではなく,組織につながっている感覚の「エンゲージメント」を作ることをもっと意識するべきだとしている。毎日,ちょっとでいいから部下や教職員に「...どう,調子は...」と言葉かけをしてはと,勧めている。